NPOが陥るエリート主義という機能不全

英国でのBrexit、そして米国でのトランプ大統領の誕生など、今年はちょっと常識では考えられないようなことが世界各地で立て続けに起きている。

なぜこうしたことが起きているのかを、経営共創基盤の冨山和彦さんが、『「Gの時代」が終わり、「Lの時代」がやってきた』というNewsPicksの記事の中で、非常に明瞭に解説している。

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詳しくはぜひ元記事を見てもらいたいが(閲覧にはNewsPicksへの登録が必要)、「グローバルエコノミーの中で急上昇していく人たち(Gの住民)と、ローカル経済の中に閉じ込められている人たち(Lの住民)の間で大きな格差が広がっていて、Lの世界の人々が反乱を起こしている」というのが冨山さんの解説の趣旨だ。

そして、僕がこの記事を読んでいて強く感じたのは、「非営利セクターが抱える矛盾」についてだ。

Lの世界にいる社会的弱者の声をきちんと拾い、その課題を世の中に提示して社会を良くしていくという活動は、まさにNPOの使命の一丁目一番地だと言える。ある意味で、Gの世界を支える資本主義をベースにした企業活動に対して抵抗し、別の価値観を提示したり、あるいは、弱者も包摂する形での社会のあり方を模索するのが、NPOの存在意義であった。

つまり、行き過ぎたGの世界に対して、Lの世界の視点からNOを投げかけて世界にバランスをもたらすという機能が、NPOには本来的には求められている。しかし、世界的な視点で見ても、日本国内のNPOを見ても、どうもNPOはその観点では機能不全に陥りつつあるように僕には感じられるのだ。

3点ほど、主に日本国内でのNPOのセクターでの気になる動きを挙げたい。


①企業活動というGの世界への迎合

第一に、僕の経営するクロスフィールズなどを筆頭に、企業の活動に対してNOと言わず、むしろ企業とコラボレーションするという姿勢を持つNPOが台頭したことが挙げられる。

これによって企業とNPOとが一緒になって価値を生み出せるようになったという大きな進化があったという反面で、企業の活動に正面からNOと言う主体者が減ってしまったとも捉えられる。悪い面だけ見れば、Gの世界の活動である企業活動のなかに、NPOの活動が取り込まれてしまったとも言えるかもしれない。

②Lの世界の代弁者であるという立ち位置の喪失

次に、2005年頃からの社会起業家ブームに乗って、事業収入を主な収入源とする事業型NPOが増えてきた動きも見逃せない。

寄付金や会費での収入によって運営を行う寄付型NPOは、株主としての寄付者や会員がいるため、そうした支援者や受益者(この中にはLの世界の人たちも多く含まれる)の声を無視した行動を取りづらいという特性がある。一方で事業収入が予算の多くを占める事業型NPOには、寄付者や会員の基盤が弱い団体が多いため、Lの世界の代弁者としてのNPOという色は薄まってきていると言える。(そして、近年メディアなどでよく注目を集めているNPOには事業型の団体がとても多い。)

また、かなりマニアックな話ではあるが、寄付型NPOのなかにも、議決権を付与しないサポーター会員という形で会員を募集している団体が急速に増えている。この制度を活用すると、不特定多数からなる多数の会員の合意を取る手間が大幅に軽減される。これによってNPOの経営のスピードや柔軟性は高まるったが、その一方で、NPOのガバナンスに一般市民が参画するという体制は、日本でNPO法が施行された1998年当時と比べると大幅に弱まったように思う。

冒頭にも書いたように、NPOというのは、政府や企業に対して市民社会を代表して声を届けるという役割が期待される組織体だ。しかし、自戒の念も込めて厳しい見方をすれば、いまの状況では、一般大衆から票を集める必要のある政治家のほうがよっぽど熱心に市民の声に耳を傾けていると言えるかもしれない。

③高学歴エリートの職場であるという体質

最後に、NPOのセクターで働く人にも注目したい。実はNPOで働いている人には高学歴者が驚くほどに多い。僕は職業柄、多くのNPOの経営者やそこで働く人にもお会いするが、特にメディアなどでよく見かけるような注目度の高い団体であればあるほど、その傾向は強いように思う。国際協力系の団体などでは、ほとんどの職員が欧米大学院での修士号を取得しているといった具合だ。

もちろん、こうした優秀な人材がNPOの世界で活躍するようになっているのは、歓迎すべき素晴らしいことだ。だが、そのことは同時に、NPOで働く多くの人がGの世界の住人たちになっていることを意味している。当事者性を持ったLの世界の住人が自ら旗を振って活動しているようなNPOは、ここのところその数が減ってしまっているように感じる。


以上が、客観的なファクトには基づかない僕の印象論メインの考察だ。おそらく、僕とは違う意見を持つ人も多いかもしれない。

だが、僕の目には、NPOの活動はLの世界とは切り離され、Gの世界のなかで完結するものになってきてしまっているように映っている。そして、こうしたNPOの機能不全が、現在世界で起きている混乱の一因になってしまっていると、僕は自戒の念を込めて感じている。

今後も、格差に苦しむLの世界での反乱が更に激しさを増していく可能性は高い。そんななかで重要となるのは、NPOの活動がLの世界の人々の声を聞き、その声をGの世界へと届けていくことだ。そのことが両者の格差の拡大を止めることに繋がるはずだからだ。

その意味で、NPOの活動にかかわる全ての人たちは、社会課題を抱える当事者の視点や、Lの世界の人々が抱える不安や不満の声に対して、もっともっと自覚的にならなければならないと僕は心から思う。

ある意味ではGの世界に組み込まれているNPOの代表格であるクロスフィールズを経営する自分がこのようなことを言っても、「お前が何を言ってるんだ」と思う人も多いかもしれない。でも、そんな自分がこうしたことを発信することも大事だと思い、思い切り自戒の念を込めて書いてみた。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
   『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

官僚の皆さん、どうしてNPOに出向しないんですか?

あまり知られていない事実だが、2014年に官民人事交流制度なるものが人知れず改正された。

これにより、中央省庁から民間に出向する際の出向先が企業以外にも拡大され、学校法人やNPOにも出向することが可能になった。実際、この制度を活用して経済産業省から学校法人に教員として出向中の方もいるなど、官僚の出向先の幅は大きく広がったのだ。

これまでも、官庁と民間企業との間では、多くの人材が出向することで様々な交流をしてきた。これによって、互いの仕事の進め方を学び合うとともに、どのような連携を図るべきかを両者で考えてきたわけだ。

そしてこれからは、行政とNPOとの間で、こうしたセクター間の連携が促進されるわけだ。これまでは霞が関のオフィスでデスクにかじりついて大量の資料とヒアリングをもとに法案を書いていた官僚が、NPOに出向して草の根の現場で思い切り汗を流す。そして、そこで見た生の情報をもとに、心の通った現場目線での法案を書くようになる。行政・企業・NPOという3つのセクターが一緒になって社会課題を解決していくことが必要とされる「トライセクター」の時代、まさにこうしたセクター間の人材交流の動きは歓迎されるべきものだ。

その意味で、2014年の法改正は非常に画期的なものだったわけだ。

が、しかし。こんなに素晴らしい法改正があったにもかかわらず、残念ながら、行政からNPOへの出向は日本ではまだ一例も実現していない。

一体なぜなのか。もしかしたら法制度上で何かの課題があったり、金銭的に無理があるなどの事情があるのでないか。不思議に思った僕は、関係者に色々と聞きまわってみた。そして、その結果分かったのは、単純に「情報が届いていない」ということが大きな要因となって、行政からNPOへの出向は実現していないということだった。

まず、そもそも法改正によってNPOへの出向が可能になったという情報を、当の官僚の方々はほとんど知らなかった。また、仮に知っていたとしても、実際に出向を受け入れたいNPOが本当にあるのか、また、自分がNPOに出向したらどんな仕事をすることができるのか、そのイメージがついていないのだ。

そんな情報のミスマッチだけが要因なら、なんとか壁は突破できるのではないか?

そんな想いから、官民協働ネットワークcrossover、新公益連盟、そして僕たちクロスフィールズとの共催で、去る5月28日(土)に「セクターの壁を越えて活躍できるリーダーを目指して。求む!行政-NPOの人材交流のパイオニア」と題したイベントを開催した。

このイベントでは、実際にセクターの枠を超えて働いた経験を持つ人たちの経験談をベースに越境経験の意義を訴えるとともに、実際に官僚の出向を受け入れる意思のあるNPOの代表者たちが登壇し、NPO出向の第一号候補者に向けてメッセージを送った。フローレンスカタリバETIC.RCFといった日本を代表するNPOが、給与面も保証するという意思も込め、全力で官僚の出向を呼びかけたのだ。

当日の会場の熱気はすごいものだった。100人収容の会場は多数のキャンセル待ちが出るなど満員御礼で、多くの現役官僚たちも参加してNPOの話に熱心に耳を傾けていた。このイベントだけで何かが動くかは分からないものの、「自分が第1号のNPO出向者になりたい」という声も数多く聞かれるなど、多くの官僚がNPO出向に対して意欲を示していたことは確かだった。

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厚生労働省の官僚がフローレンスに出向して保育の現場を経験する。
文部科学省の官僚がカタリバやTeach For Japanに出向して教育の現場を経験する。
内閣府や復興庁の官僚がRCFに出向し、東北や熊本の復興の最前線で汗を流す。
外務官僚がクロスフィールズで新興国のNGOと仕事をし、新しい国際協力のあり方を考える。

そんなことが起こったら、世の中の課題解決はもっともっと進んでいくと思うのだ。もちろん、特定の団体に関係省庁から出向があると癒着の問題が懸念されるという指摘もある。ただ、それは民間企業への出向でもあった話で、色々と工夫をすれば超えられる課題のはずだ。

なんとかして、そんな日本社会の課題解決を一歩進めるような動きが出てきて欲しい。

あとは、誰か1人、パイオニアが出てくるのを待つだけだ。
官僚の方々、どなたか手を挙げてみませんか?全力でサポートしますよ!

小沼大地(@daichi0715) 

 
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。 

INSEADでの経験の報告会を開催します!(2/25 19:30-@目黒)

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早いもので、シンガポールで開催されたINSEAD Social Entrepreneurship Programme(ISEP)に僕が参加してから約2ヶ月が経ちます。かなりマニアックな内容だったものの、体験談をブログに残したところ、意外なことにそれなりの反響を頂きました。

↓僕の体験記はこちら
概要編 http://girgis.blog93.fc2.com/blog-entry-177.html
学び編 http://girgis.blog93.fc2.com/blog-entry-178.html

で、反響があったことに気を良くして「報告会をやります!」と宣言してしまったこともあり、この度、2月25日(木)の夜にちゃんとした報告会を開催することにしました!

ただ、僕が学んだことをそのまま話すだけではつまらないので、ETIC.さんの力をお借りして非常に贅沢な企画に仕立てあげさせて頂きました。(色々な背景があり、J.P.モルガンさんの協賛でETIC.が実施しているIMPACT Lab. という企画に乗っからせて頂いてます)

なにが贅沢って、なんと、豪華ゲストにお越し頂きます!

ソーシャルベンチャー・パートナーズ(SVP)東京のファウンダーであり、慶應義塾大学で特別招聘准教授をされている「いのさん」こと井上英之先生に僕の学びを引き出してもらう形で、この報告会を進めていきます。

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いのさんもShumacher CollegeというUKの大学が開催している "The Right Livelihood Programme"に参加されたばかりということで、ここでの学びを披露して頂きながら、会場の皆さんと一緒に学びを深めていければと思っています。

そして、会場も贅沢です。
Impact HUB Tokyoさんの超素敵でクリエイティブな会場で開催させて頂きます。

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集客は、僕のブログでコソッとだけ宣伝をして、それに気づいたマニアックな人たちと、ETIC.さんの呼びかけてくださる社会起業の実践家たちだけで、小規模かつアットホームにやりたいと思っています。

2つの海外プログラムでの学びを題材に、日本のソーシャル・ビジネスやCSRの実践者たちが集って、あーでもないこーでもないと、ソーシャルインパクトの生み出し方について議論を深めていくイメージです。

そんな議論に入ってみたい方、ISEPやShumacher Collegeのプログラムに興味がある方、そして、欧米の先進的な理論・実践を日本のソーシャルセクターとしてどのように吸収していくべきかに興味があるというマニアックな人、ぜひともお越し下さいー!

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「ソーシャルインパクトをうみだす理論と実践知の最先端」
~INSEAD(シンガポール)&Shumacher College(イギリス)の
   社会変革リーダー向けプログラムから学ぶ~
      日時:2016年2月25日(木)19時30分〜21時30分
      場所:Impact HUB Tokyo@目黒
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 IMPACT Lab. (企画・運営:NPO法人ETIC. / 協賛:J.P.モルガン)
             presents "Breakthrough Dialogue session"

<開催概要>

日時:2016年2月25日(木)19時30分〜21時30分(開場19時10分~)

会場:Impact HUB Tokyo
(JR山手線・東京メトロ南北線・都営三田線ほか「目黒」駅 徒歩10分程度)
http://hubtokyo.com/

参加費:1,000円(ドリンク代・軽食代に使わせていただきます)

当日プログラム:詳細は未定

定員:40名程度(万が一、応募多数の場合は抽選とさせて下さい!)

申し込み方法:
下記URLに必要事項をご記入の上、ご登録ください。
http://ow.ly/XX190

申し込み期日 : 2016年2月22日(月) 9:00
※先着順のため、上記より早く締め切らせていただく場合がございます。


当初想定を大幅に上回るお申し込みをいただいたため、
申し込みを締め切らせていただきました。ありがとうございました。



<問い合わせ先>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
IMPACT.Lab 事務局(NPO法人ETIC.内)担当:山崎、小泉
〒150-0041 渋谷区神南1-5-7 APPLE OHMIビル4階
TEL: 03-5784-2115
MAIL : incu@etic.or.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ではでは、ぜひお越しをー!!!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。

INSEAD Social Entrepreneurship Programme(学び編)

さて、先週6日間にわたって参加してきた、シンガポールでの
INSEAD Social Entrepreneurship Programmeのコース。
「概要編」に続き、「学び編」をアップします。(それなりに長文です)

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前提として、本当にたくさんのことを勉強したので、その全てを
僕が吸収できたとは思っていません。また、自分自身がが落とし
込むにも相当な時間がかかるかと思います。ただ、それでも記憶が
フレッシュなうちに伝えておけることもあると思い、荒削りでは
ありますが、まずは吐き出すことをしておきたいと思います。

ちなみに、僕はこの手の社会起業家やリーダー向けの研修には
何度か参加させて頂く機会があったのですが、良くも悪くも、
この手の研修はリーダーシップ開発的な内省のプロセスとして
構成されてるものが多いと思います。その中にあって、今回の
コースは社会インパクトを起こすための理論と実践知に一貫して
フォーカスしていた印象。これまで出たどんな研修よりも、
新しく獲得した知識や情報の量は多かったような気がします。

そんなわけで、どうやってこの記事を書くかかなり迷いましたが、
体系的に書くのは僕の能力では到底不可能なわけで、開き直って、
僕の中で刺さったことに絞って、その中でも、汎用性の高そうな
学び・教訓を「7つのレッスン」としてメモに残そうと思います。

社会インパクトを出そうと必死に頑張っている人たちにとって、
少しでも何かの参考になれば幸いです。。。

※ 多分に僕の解釈・理解を加えていることをお許し下さい。
※ なお、一部実際の教材も使いながら内容を共有していますが、
  このあたり、日本のSocial Entrepreneurshipを育てるためと
  いうことで、INSEADの教授陣からも許可をもらっています。

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↑修了セレモニーにて、メイン教授陣のJasjit(左)・Hans(右)の2人と。


LESSON 1:
本気でSocial Innovationを起こして世界を変えたいなら、
ビジネスモデルではなく"インパクトモデル"をつくれ


・「ビジネスモデルをつくって経済的に持続的な事業を経営するとともに、
 社会インパクトを出して世界を変える」のが社会起業家の正しい姿である

・社会起業家がSocial Innovationを起こすための正しいステップは、
 「①立ち向かう問題の特定」→「②持続的なビジネスモデルの策定・
  インパクトモデルの策定」→「③モデルが有効かの検証・改善」→
 「④インパクトモデルの更なる効率化・深化」→「⑤モデルの拡散」
 
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・陥りがちなのは、ビジネスモデルをいくら大きくしたとしても、それが
 立ち向かおうとしている課題に対する正しいアプローチではなかったら
 全く社会インパクトは出ないという罠。重要なのは、解くべき問題を
 正しく定義し、問題のRoot Causeを断ち切るために最適なSolutionを
 的確に届けていくこと。この、社会課題を解決して社会インパクトを
 生むためのモデルを「インパクトモデル」と呼ぶ(この考え方は
 「Theory of Change」とも呼ばれ、日本ではその方がメジャーか?)

・このインパクトモデルをシンプルかつ的確に構築できるかどうかで、
 その組織・事業の生む社会インパクトは大きく変わってくる


LESSON 2:
社会起業家にとっても、やはり大事なのは"競合"に勝つことだ


・ソーシャルセクターでは、ついつい「私たちには競合はいません。
 色々な人たとパートナーとして手を取り合って世界を変えていきます」
 となりがちだが、そんなことはない。競合は必ずいると思った方がいい。

・寄付型の組織であれば、寄付市場を奪い合う他のNPOは紛れもなく競合
 だと呼べる。他の団体よりもどれだけ圧倒的に高い価値を自分たちが
 届けられているかどうかを徹底的に追求し続けるべき。それでこそ、
 真の意味でソーシャルセクター全体として寄付市場の拡大が可能になる

・社会起業家の世界における競合とは、既存の「ダメなソリューション」。
 たとえば、ソーラーランタンを製造・販売する社会起業家であれば、
 「灯油ランプ」こそが競合のソリューションとなる。そして、本当に
 インパクトを出すためには、競合のソリューションよりも圧倒的に高い
 価値を顧客に提供できているかに、徹底的にこだわっていくべき


LESSON 3:
ソーシャルビジネスと普通の企業との違いは、
経営者の"意図(Intention)"と意思決定のあり方にある


・(日本でも度々議論になる)ソーシャルビジネスと普通の企業との
 違いという問いに対し、グローバルでも統一された見解は存在しない

・ただし、1つの鍵となるのは経営者がどんな意図(Intention)を
 もって企業を経営しているかということ。社会を変えることを第一に
 事業をしているのか、利益を出すために社会と向き合っているのかが
 両者の違いである(ただし、これもはっきり白黒がつく議論ではない)

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・たとえば、世の中の組織体は上の5つの箱のように分類できる。一番右が
 一般的な企業だが、CSVの実現を目指したユニリーバの取り組みは右から
 2番目の「Sustainable Business」と呼んで、パタゴニアのような
 経営者が環境を第一に置く事業は「Socially-Driven Business」と呼ぶ
  (コースでは、パタゴニアのケースは4時間かけてやりました)

・Socially-Drivenな事業かどうかをよりハッキリ定義をしようとすると、
  「全ての意思決定において、社会インパクトのKPIが優先順位の1位に
 置かれているか」という問いにYESであれば、左3つの中に入る


LESSON 4:
社会を変えるSolutionは、3つの方法で飛躍(Scale)できる


・通常の企業では、自社の規模の拡大こそが唯一の飛躍の方法だが、
 Social InnovationのSolutionの飛躍については、「①Scale-Up」
 「②Scale-Out」「③Scale-Deep」という3つのあり方が考えられる

・「①Scale-Up」とは、通常の企業と同じように自社の規模を広げて
 いくことを指す。たとえばグラミン銀行はバングラデシュ内に
 2,000位上の支店を出すということでインパクトを拡大させた

・それに対して「②Scale-Out」とは、パートナー団体などと協働
 しながらインパクトを高めていくという方法。たとえばDialogue in
 the Darkはフランチャイズ型で、TEDxはライセンス型で、また、
 Teach For AmericaやImpact HubはNetwork型を取ることで、他国
 においてもインパクトを出すことに成功した。Scale-Outをする
 際には中央集権型にするか自治型にするかの選択があって、それぞれ
 メリット・デメリットがあるので、各組織が慎重に考えていくべき

・最後に「③Scale Deep」とは、同じ地域の中で、より効果の高い
 Solutionを同じ顧客に届けたり、既存モデルを使って新しい顧客に
 価値を届けることで社会インパクトを高める方法。たとえば、
 これまで大学生にやっていた活動を高校生にまで広げたり、
 Dialogue in the DarkがDialogue in Silenceを開発することなど

・大事なのは、この3つの飛躍を同時に目指さないこと。そうすると
 経営が複雑化して失敗に陥ることが多い(コースでは、これによる
 失敗事例のケースも沢山読みました)

・また、実はScale Deepしすぎてモデルが複雑化するとScale-Out
 しにくくなることも多いので注意が必要。とにかくシンプルで
 強固なソリューションであることが、飛躍には不可欠である


LESSON 5:
普通の企業活動は"死ねる"が、社会起業家は"死ねない"


・株式会社の活動は、市場から必要となくなって事業の存続ができ
 なくなれば、その瞬間にハッキリと姿を消すことができる

・一方で、ソーシャルビジネスには大義があるため、いつ消滅する
 かの境が曖昧となってどん底の状態のままになるケースがある

・特に助成金や寄付に頼るNPOは、この点には大きな注意が必要。
 現場では全くもって機能していないのに、それが寄付者などの
 資金提供者に(意図的かそうでないかは別として)伝わらず、
 意味のない活動を、さも意味のあるように続けなければいけない
 場合がある。こんなことをしていても、世界は悪くなる一方だ

・これを防ぐためにも、活動の成果をKPIとして明確に定義して、
 本当に成果・インパクトが出ているかを測ることが極めて重要


LESSON 6:
社会起業家の意思決定には"AAAフレームワーク"を使え


・INSEADのMBAのクラスでも教えられる意思決定の際の問いかけに、
 AAA(トリプル・エー)というフレームワークがある。これに
 下の赤字部分を足すと、社会起業家向けとしても有用になる

スライド2

・通常の経営者は黒字の6つを意識するだけでいいが、社会起業家
 は6つ全てを考慮に入れて意思決定を行っていく必要がある

・1つ目のAは「Opportunity "A"ttractiveness(機会の魅力度合)」。
 黒字では「経済的に今後魅力的な市場か?」であり、赤字では
 「この社会課題を解く優先順位は高いか?」という問いとなる

・2つ目のAは「Competitive "A"dvantage(競合優位性)」。黒字は
 「他社に勝てるのか?」であり、赤字では「このSolutionは社会
 にとって本当に最良のものなのか?」という問いとなる

・3つ目のAは「"A"ggregate Implications(結果の総合的な影響)」
 で、黒字では「他の事業にどんな影響があるか?」であり、赤字
 は「世の中全体に対してどれだけの波及効果があるか?」となる


LESSON 7:
"Convergence Economy"という概念がこれから台頭する


・グローバルな規模で見た時に、多くの社会課題は複雑に絡まり合い、
 むしろ逆に"Convergence(収束)"しているような状態になった

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・こうした状況下では、パブリック、ビジネス、ソーシャルという3つの
 セクターがサイロにはまって動いても、絶対に課題は解決できない。
 セクターをまたがるWIN-WINを作り出して活動をすることが大事であり、
 有効なSolutionは必ずセクター間の協働が含まれるような時代となる

・アクセンチュアの調査によれば、グローバルな企業のCEOの93%は
 「社会のSustainabilityは自社の戦略の一部だ」と答えていて、78%が
 セクターを超えた協業が不可欠と答えるような時代が既に来ている

・この時代に生きる社会起業家として、Convergence Economyの時代に
 何ができるかを考えるべき。(ちなみに、このテーマの議論のときに
 クロスフィールズの活動をこの文脈で紹介したら、教授やクラスメイト
 から「それはInnovativeなインパクトモデルだ!」とお褒めの言葉を
 沢山もらえ、グローバルに通用するモデルだとの手応えを得ました!)


以上、長々とはなりつつも、それぞれはあまり深く書けなかった
感じですが、僕の学んだ「7つのレッスン」を書かせてもらいました。

なお、いまの7つは授業から学んだことですが、世界中から集まった
社会起業家のクラスメイトからも、沢山のことを学ぶことができました。

たとえば衝撃的だったのは、南アフリカから来たGareth。(下の写真の左側)

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彼は失業率が50%を超す南アフリカで失業者支援の事業をやって
いるのだけど、とにかく優秀で知識も豊富で、驚きの連続でした。
授業に関連することや、僕の事業のことで悩み相談をすると、

「その領域についてはBain&Compnyがつくったこのフレームワーク
 がとても参考になったよ。参考になるリンク、送っておくね」
「難しい問題だね。でも、先月のHarvard Business Reviewの
 論文に、Daichiが使えそうな経営の考え方が書いてあったよ」

とか、スラスラと答えが出てくるのです。こんなにビジネスセクター
での知識・経験を活かしてソーシャルビジネスを経営してる人間に、
僕はあまり日本では出会ったことがない気がします。そして、知識
だけでなく、この短期間でもヒシヒシ感じるくらいの素晴らしい
リーダーシップを持っている人間なのです。そしてビックリなのは、
彼がまだ創業3年目の28歳で、特にビジネススクール経験もないこと。
ホント、世界には嫌になるほどスゴい奴がいるものですね。。。


こんなクラスメイトに囲まれながら、Social Entrepreneurshipなる
ものについて、吐き気が出るほど学習・議論し続けるという6日間。

創業5年目となって、いちど事業や自分自身を振り返ってみたかった
僕にとっては、(ちょっとハードでしたが)本当に最高の時間でした。
改めて、送り出してくれたクロスフィールズのメンバーには感謝を
したいと思うし、言葉だけではなくて、これからの事業のなかで
学びを経営に活かしていくことでこそ、感謝を示したいと思います。

また、今回の学びは、僕やクロスフィールズの中で閉じてしまって
はいけないと思っています。年明けくらいには、別途、今回の学びを
興味のある人たちと共有しながら深めていくような報告会も開催して
みたいと思っているので、関心ある方はぜひご参加下さいませ!
(自分にプレッシャーをかける意味でも、ここで宣言しました。笑)

では、長々とこの文章にお付き合い頂いた方々、
どうもありがとうございました!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。

INSEAD Social Entrepreneurship Programme(概要編)

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11月29日から12月4日までの6日間、INSEADというビジネススクールが
シンガポールで開催したINSEAD Social Entrepreneurship Programmeという
社会起業家のためのExecutive Educationのコースに参加してきました。

■ コースの公式ウェブサイトはこちら
http://executive-education.insead.edu/social-entrepreneurship

2006年に始まった、世界的にも珍しいSocial Entrepreneurshipをテーマの
中心にした短期集中のコースで、これまでフランスとシンガポールで計19回に
渡って開催されているとのこと。過去には600人以上が参加しているものの、
聞くところによると日本人はこれまで数人しか参加していないので、日本での
認知度はほぼ皆無という感じだと思います。(ちなみに、僕はラオスで活動
するドイツ人の社会起業家の友人に勧められて存在を知りました。)

今回このコースに参加することをFacebookにポストしたところ、マニアックな
人もいるもので(笑)、多くの人から個別に問合せを頂きました。僕としても、
参加した感想として、ぜひ多くの日本人が参加したらいいのではと思ったので、
今後このコースに参加しようと考える人のために、「概要編」と「学び編」
2回に分けて、今回の経験を記事としてまとめておこうと思います。

この記事が、少しでも日本のソーシャルセクターの発展に役立てば幸いです!

以下、このコースの概要と僕個人としての所感になります。
※ 情報量が多いため、少しログ的な記載方法になってることお許し下さい。
※ ここでの記載はあくまでも今回のコースを経験しての僕個人の主観に
  基づいたものであることを理解して読んで頂けたら幸いです。

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【コースの参加者】

・毎回だいたい30人前後が参加
・僕が参加した回は少し参加者が少なくて、26人の参加者
  -国籍は、インドネシア4人・インド4人・イギリス2人・南アフリカ2人・
   ポルトガル2人・ウガンダ1人・オランダ1人・オーストラリア1人・
    ブラジル1人・香港1人・バングラ1人・シンガポール1人・ネパール1人・
    フランス1人・タイ1人・フィリピン1人・日本1人(僕)と幅広い
  -バックグランドとしてはは、1/3がTraditional NGO、1/3がいわゆる
    Social Entrepreneurで、残りがImpact Investerと大学関係者(MBAの
    教授で、これから社会起業家コースを開きたい人たち)という感じ
  -多くの人がCEOかExecutive Directorといった感じの肩書きなものの、
    ポジションに就いてからの期間は5年以内という人が多く、参加前の
    僕の予想には反して、比較的キャリアの浅い人が多かった
  -参加者の年齢は20代後半から30代中盤で7-8割か。残りは40-50代

【講師】

・6日間のコースを、計5人の講師陣が変わるがわるに担当
  -うち2人が最初から最後まで監督してくれて、面倒見は非常に良い
  -講師の国籍は、アメリカ2人・ポルトガル2人・インド人1人
・講師はINSEADの教授陣の中でもSocial Entrepreneurについて研究をして
 いる学者たちで(専門はStrategyやInnovation)、レベルは極めて高い。
 多くが社会起業家としての実践も積んでいるので、説得力もある
・指導方法としては、ケースを活用しながら理論の説明と議論を進めつつ、
 実践家が集まっていることを意識して、参加者各自の活動に当てはめたら
 どうなるかを常に問われ、そこまで落とし込むことが重視されている

【クラスの雰囲気】

・授業はインタラクティブで、講師の説明と参加者の発言が半々くらい。
 ブレイクアウトセッションも設定されて、チーム別の議論も多い
・やはり英語Nativeの英国人・インド人の発言が目立つものの、
 ダイバーシティを大切にしようとする雰囲気がクラス全体にある
・ソーシャルセクターの中でもビジネス系とNGO系の両方の人種が
 混ざっている感じで、非常に多様な意見が出ている
・特にテストがあるわけではなく、実務家たちが学びに来ているという
 感じなので、雰囲気としてはとても協力的でポジティブな印象

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【スケジュール】

・鬼のように忙しい。本業を離れて少し中長期的なビジョンを考えたいと
 いうモチベーションだった僕としては、かなり面食らった感じ
・セッション自体は毎朝8:30に始まって20:00くらいまで続く。その後も
 メンターセッションや懇親会などがあり、開放されるのは23:00くらい
・上記に加えて、ケーススタディに向けて毎日10-30ページくらいの資料
 を読み込む必要がある。結局、早朝か深夜のどちらかにやることになる
Dialogue in the Dark Singaporeを経験するという体験型の活動もあり
・当然ながら日本は平日なわけで、多くの場合にはこれに加えて日本との
 やり取りが発生する(参加する方には、この期間に本業での作業の予定
 を入れることは基本的に勧めません)

ちなみに、コースのスケジュールはこんな感じです。

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【このコースで学べる主な内容】

◇Social Entrepreneurの役割と、いま彼らが最前線で抱えている課題
◇様々なタイプのSocial Businessの成功事例/失敗事例とその要因
◇Social Impactを生み出すために取るべき5つのステップと、
 各ステップで必要となる考え方と課題を突破するための戦略
◇Social EntrepreneurがImpactをScaleさせるためのフレームワーク
◇Social Entrepreneurに求められる実践的スキル(エレベーターピッチ、
 ネゴシエーション、クリエイティブ思考法、大組織の動かし方、など)
◇企業内のSocial Entrepreneurに求められる役割とそこでの課題
◇Social Impactの測定方法と、その測定方法のあり方

※ 学びの詳細については、よければ「学び編」を参照して下さい

【日本から参加をお勧めしたい人】

・NPO法人/株式会社を問わず、社会課題解決を目指す組織の代表者/幹部
  -特に、これからスケールアップすることを志向するステージの人
  -団体の事業を再構築する必要があると考えている人 
・ソーシャルセクターで中間支援的な役割を果たしている方
・ソーシャルセクターをテーマに研究・指導しているアカデミックの方

【参加費/次回の開催】

・授業料は約60万円(シンガポール:6,800SGドル、フランス:4,300EURO)
 というイメージ。これに加えて渡航費・宿泊費も必要になる
・ただし、詳しくは言えませんが、僕はNPO枠だったということでINSEADに
 幾分か奨学金をもらうことができた。加えて、JANICの海外スタディプログラム
 研修の制度で金銭的サポートをして頂いた(本当に有難うございます!)
・次回開催(2016年)は、シンガポールが11/13-11/18で、フランスでは
 11/27-12/2となる見込み

【参加要件/求められる英語レベル】

・どの程度厳格かは不明なものの、書類審査に合格する必要あり
・社会起業家としての実務経験が必要と書いてあったものの、実際には
 サービスインして間もない人も多く、あまり気にしなくていいか
・英語が母国語ではない人も多いものの、英語はそれなりにできないと
 相当に痛い目を見る。海外大学院に入れるくらいの英語力はあった方
 が無難だと思う(僕の場合、普通の授業には何とかついていけたものの、
 ディスカッションのリード役になった時とかは相当に辛かったです...)

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【所感】
※ このパートは特に完全なる主観なのでご注意を!

[オススメする点]
・とにかく講師の指導の質が高い。4時間連続の授業も全く飽きないレベル
・最先端のケーススタディをもとに、理論と実践の両方を学ぶことができる
・日本で既に何度も紹介されているケースも、全く違う切り口で学び直せる
・非常にダイバーシティのある参加者が集まっていて、世界中の様々な立場
 の人たちの意見を聞くことができ、議論することができる
・世界中から社会起業家が集まっているという環境で、自分のモデルは世界
 からどう評価されるかを知れて、改めて事業の価値を考え直すことができる
 (「あなたの事業、ここが面白いね」と言われる観点が、日本とは全く違う
  ことがあって、信じられないほど多面的に事業を捉え直せます。実際、
  休み時間の雑談からの学びが相当に大きかった気がします)
・世界中の社会起業家たちとのネットワークができる(過去に参加した600人
 以上の卒業生たちとSNSなどで繋がれます。1年に1回のGatheringもあり)

[オススメできない点]
・とにかく参加費が高い(ただ、僕もそうですが、大きな投資をすると、
 その分何とかして学んで来ようという意思が働いていいのですが、、、)
・非常に幅広いトピックをカバーするので、全方位的に興味がある人には
 有益な内容なものの、一部のみ興味がある人には費用対効果が低い
・僕もそれなりにソーシャルセクターについて勉強してきたこともあって、
 紹介される事例自体は既に知っているものが多かった(日本語で手に
 入る情報量はかなり多いという現在のありがたい環境に改めて感謝)
・とにかく忙しいので、コース中はゆっくりと事業を振り返るような時間
 は取れない。かなり意識して、特に事後の内省の期間も設ける必要あり
・1週間と期間が短いので、当然ながら1人1人に対するそこまで手厚い
 フォローはない(この点、やはりETIC.の運営する社会起業塾のモデルは
 起業家支援のプログラムとしてグローバルレベルだと改めて実感)

長々と書きましたが、以上です。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。