NPOの世代交代

サンフランシスコではとても有名な革新的な財団の創業者、
タイズ財団ドラモンド・パイクさんがCEOのポジションを退くことを決めた。

ドラモンド・パイクさんのブログ

パイクさんは、現在60歳。
まだまだできる年齢だとも、考えられる。

では、なぜ引退するのか?

それは、1人のカリスマ創設者にたよった経営をする組織ではなく、
持続的に成果を出す組織に成長させることを目指した上での決断なのだと思う。

もちろんこの答えは推測の域をでないけれど、おそらく、
こうしたことを考えている団体がいくらかでもあるということが、
アメリカのNPOが日本よりも「進んでいる」所以なのではないだろうか。


さて、これに絡んで、ちょっと前に読んだ
それはそれはマニアックな本の内容を少し紹介したい。

Working Across Generations: Defining the Future of Nonprofit Leadership (Kim Klein's Chardon Press)Working Across Generations: Defining the Future of Nonprofit Leadership (Kim Klein's Chardon Press)
(2008/10/27)
Frances KunreutherHelen Kim

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僕は以前より、NPO業界に世代間で大きな考え方の違いがあると感じていたが、
「Working Across Generation」と題されたこの本には、まさにそのあたりが書いてある。
せっかくなので、特に面白かった内容を2つほど取り上げたい。


①NPOワーカーの世代マッピング

筆者はNPO業界で働く人々を4つの世代に分け、代表的な特徴を次のように整理している。
(ただし、かなりの勢いで僕の意訳が入っているのでご注意を)

変革ベテラン世代 (1925-45年生まれ)
NPOという概念を創り上げた草分けの世代で、百戦錬磨の大ベテラン
組織に対する忠誠・コミットメントを重要視し、トップダウン型の傾向あり

ベイビーブーマー (1946-64年生まれ)
自分たちは変化を起こせると信じ、ひらすら働き続ける人たち
最近は多すぎる業務に疲れ気味で、輝かしい60-70年代を懐かしむ傾向あり

ジェネレーションX (1965-1979年生まれ)
前後のボリュームの大きな世代に挟まれて、比較的存在感のない世代
ブーマー世代の自己犠牲的な働き方に懐疑的で、もっと楽しく働こうとする

ミレニアム (1980-2000年生まれ)
従来のやり方を否定し、測定可能な成果やビジネスとの連携が必要と主張
様々な方法論を振りかざし、実践的であることを喜びとする


この分類、当然アメリカにおける世代分類なのだけれど、
日本にもほぼ完璧に当てはまってしまうのが非常に面白いところ。

そして、やはり僕が気になるのは、ベイビーブーマーvsミレニアムの構図。

日本においては、70年代からNPO/NGOを引っ張ってきた「団塊の世代」と、
NPO法施行後の設立ラッシュや社会起業家ブームで出てきた「ロスジェネ世代」との
考え方の違いだと言うことができるだろう。

それぞれの世代が主催するイベントに出てみても、
この両者はほとんど別の世界を生きているような印象が、僕にはある。

団塊の世代がそろそろ引退を始める中、この2つの世代がどのように
混ざり合っていくのかが、日本の非営利セクターにとって大事だと思う。


②世代交代にまつわる課題

世代交代をキーワードとした無数にある課題を、
筆者は特に代表的な5つの課題として以下のように整理している。
(こちらも意訳のオンパレードなのでご注意ください)

1.ベイビーブーマーの一斉リタイア
現在NPO業界を支えているベイビーブーマーは確実に高齢化しており、
このままでは彼ら/彼女らが一斉に辞めて、業界が空洞化する恐れがある

2.ベイビーブーマーの居座り
一方で、古い世代はできるだけ組織に居座り続けてたいと思っている
若い世代はマネジメントの機会が与えられず、自らの将来像が描けていない

3.CEO(事務局長)という役職の魅力のなさ
権限譲渡を上手くできない組織が多く、CEOのバーンアウトが後を絶たない
結果としてNPOのCEOという役職に魅力がなくなり、若い世代が興味を示さない

4.後継者を育成する意識の欠如
NPOのリーダーたちは業界の次の担い手がいないと騒いでいる割に、
自身の組織に既にいる若い世代をリーダーに育てようという意識が見られない

5.時代遅れなNPOの組織体制
40年前に作られた官僚的な組織体系は時代遅れになっているが、
旧来の体制に固執する団体が多く、新しい世代を呼ぶ魅力が失われている


こちら、どれも日本のNPOにとっても大事な課題だと思うけれど、
特に2.居座り問題5.組織体制の問題が日本では深刻なのではないだろうか。

居座り問題
日本のNPO業界では、冒頭のタイズ財団のパイクさんのように勇退する
CEOはほぼ皆無なんじゃないかと思う。感覚としては、新規団体をのぞけば
CEOの平均年齢は毎年1歳近く上がっている状況なんじゃないかと思う。

「俺がいなきゃダメだ」は正しいかもしれないけれど、
組織のため、業界のために勇気をもって退くことも必要だと思う。

組織体制の問題
特に、理事会に権限をもたせすぎる現行の組織体制は見直す必要があるように思う。
自分も何度か経験したけれど、特に規模の小さなスタートアップの団体では、
身のこなしが遅い理事会が邪魔になって小回りが利かなくなることがとても多い。

NPOが誰にとっても更にパワフルな社会変革のツールになるには、
団体ごとのニーズに合った組織体制の柔軟化もとても大事なことだと思う。


と、またしてもマニアックなことを長々と書きすぎました。
ここまで読んで頂いた稀有な方、そんな方がもしもいたとしたら、本当にありがとうございます!
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