戦火のシリアに暮らす「第2の家族」との7年ぶりの再会

3泊4日のレバノンでの滞在を終え、いまは日本へと向かう飛行機のなかにいる。前回の記事でも書かせてもらったけれど、今回の訪問の目的は、シリアに住む「第2の家族」とも呼べる友人Nと7年ぶりに会って話をすることだった。

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↑レバノンを訪れるのは今回が3回目だけど、いつ来ても本当に美しい街だ


そして、色々な方からのサポートがあり、今回、無事に友人との念願の再会を果たすことができた。なんと運良く初日から合流することができ、幸せなことに、丸3日間、一緒に時間を過ごしてくることができた。

本当に、友人Nはよく来てくれたと思う。彼はいくつかの検問をくぐり抜け、国境を超えてレバノンまで訪ねてくれた。正直なところ、彼が来る確率は1-2割くらいだと思っていたので、こうして再会が実現したことは本当に嬉しかった。「いま向かっているよ」というメールが届いたときには、僕の心臓は思い切り高鳴り、久々に、自然と涙が出てきた。

再会の直前、この数年間待ち望んでいた瞬間の実現に、僕の気持ちは高ぶりきっていた。でも、いざ会ってみると、それは意外なほどにあっけないものだった。抱き合って二人で号泣するのかなと妄想していたけれど、最初に会ったときも、さっきまた別れを告げたときにも、特に涙もなかった。7年ぶりに時間を過ごしているとは思えない、ごく自然な再会になった。

この3日間、僕らはただただ一緒に過ごした。朝飯から晩飯まで一緒にメシを食べ、僕の泊まっていたホテルのダブルベッドに一緒に寝た(本当に来ると思ってなかったことがここで友人Nにもバレた)。首都ベイルートの街をブラブラと散策したり、近郊の街まで小旅行をしたりしながら、バカ話も含めて、沢山の話をした。

12年前に僕が青年海外協力隊としてシリアで過ごしていた時と同じような空気が、そこには流れていた。違ったのは、お互いに少し歳をとったことと、僕のアラビア語が相当に劣化していたことくらいだ。感覚としては、久々に実家に里帰りをして両親と時間を過ごしたような、そんな気分だ。なんだか拍子抜けするくらいに、穏やかな時間だった。


こうして丸3日間を彼と過ごしてみて思うのは、やはり今回思い切ってレバノンに来て良かったということだ。

いまから3年ほど前から、僕は友人Nに対して国際送金で仕送りを続けてきた。このサポートは必要なことではあったものの、一体そのことが彼とその家族にどんな影響を与えていて、僕たちの友人関係にどんな影響を及ぼしているのか、正直、とても不安だった。

でも、今回彼と色々な話をしてみて、これまで僕がやってきたことは間違っていなかったと思うことができた。当たり前ではあるのだけど、僕と彼とは「支援者」と「支援される者」である前に、明確に「大切な友人」だった。今回一緒にいても、彼との間に上下関係とか、「支援してあげている」という気持ちとかを感じることは、ただの一度もなかった。そこにあったのは、9000キロというもの凄い距離を隔てながらも築くことができた、人生でも最も大事だと思える唯一無二の友人関係だった。

もちろん、仕送りの話題にもなった。そのときに彼が言ってくれたのは、「本当にいつもありがとう。でも、こんなこともあったわけだから、きっとお互いが死んでからも子どもたちが僕たちの関係のことをずっと語り継ぐことになるだろうね」という言葉だった。

いま友人Nと彼の家族の生活をサポートしているということは、僕の人生のなかでも最も尊い行動をする機会をもらえているということなんだと感じた。純粋にそのことに対する感謝の気持ちで胸がいっぱいになったし、幸せを感じた。そして、今回仕送りをするようになったことで、僕たちの友人としての絆はさらに強固になったことを、胸の奥の方でグッと感じすることができた。

今回直接会って話をしてみて、僕の心の奥に引っかかっていたものがスーッと消えていくかのようだった。

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↑レバノンの首都ベイルートのモスクにて友人Nと。


そして、もう一つ。やはりどうしても書いておきたいことがある。

戦争についてだ。

6年半もの期間を戦火のなかで暮らしてきた友人が僕に繰り返し伝えてくれたのは、「戦争の愚かさ」と「平和への渇望」だった。

6歳になる友人Nの長男は、とても利発で元気な男の子だが、なにか大きな音がすると恐怖に怯えてしまう。血相を変えて走り回って、しばらくすると毛布にくるまってしばらく出てこれなくなってしまう。戦闘機が飛んでくる音や爆撃の音を嫌というほど聞いて、大きな音に対して過度な反応をするようになってしまったのだ。

友人Nの親戚の青年は、紛争が起きてすぐに13歳でレバノンに出稼ぎでやって来た。狭い部屋に他のシリア人の若者たちと暮らしながら、週6回の勤務で朝4時から朝9時まで八百屋で働き続けている。そして、生活費も切り詰めながら何とか捻出したお金をシリアに住む家族へと仕送りをしている。帰国すると徴兵されてしまう危険性があり、この間、一度もシリアには帰っていない。シリア人にとって、生まれ故郷や家族と離れて生活をするというのは、最も過酷なことだ。そんな日々が6年半も続いている。

そして、将来に対する不安も大きい。仮に紛争が落ち着いたとしても、シリア国中に広く行き渡っている武器や弾薬をどのように根絶していくかには、全く道筋が立っていない。当然のことだが、武器があれば何かしらの暴力が続いてしまう可能性は高い。このことが、友人Nにとっては将来に向けた最大の心配事なのだそうだ。

「いま、シリアに住むすべての人たちは、紛争の終結を心から願っているんだ」

はじめは「政府寄り」「反体制派寄り」等といったスタンスの違いで、シリア人たちも一枚岩にはなれていなかった。でも、いまは違う。6年半という途方もない期間を戦火のもとで過ごした人々は、もはや戦争というものに対して辟易としているのだ。

「もはや誰がこの国を収めることになってもいい。誰もが、暴力と戦争とに疲れている。このバカげたことを終わらせることだけが、僕たち全員の願いなんだ。2017年を、この戦争の最後の年にしなきゃいけない」

そう語っていたときの、友人Nの珍しいほどの力強い口調を僕は忘れることができない。

+++

前回と今回の、長々とした冗長でナイーブな文章を最後まで読んでくださった方には、感謝しかない。そしてコメントや個別のメッセージをくれた方にも、心から御礼を伝えたい。周りの人たちに少しでも関心を持ってもらえて嬉しかったし、応援してもらえたことは本当に心強かった。また、個別に厳しいことを指摘してくれた友人もいて、そういう声には色々な気づきを頂いた。改めて、こうして行動したり発信することは大事だと感じさせてもらった。

最後に、もしも今回のことでシリアをめぐる情勢に興味を持ってくれた人がいたとしたら、以下も参考にしてもらえたらと思う。(情報を提供してくださった方、本当にありがとうございます!)

1.BS1 国際報道2017 シリア最新情勢~未来の“復興”に向けた支援を~
9/26(火)の夜22時からの上の番組で、シリア最新情勢の特集があります。国連開発計画(UNDP)のシリア事務所の副所長を務めている須崎彰子さんがスタジオ出演するとのこと。現地での最新の生の情報が分かるはずです。

2.青山弘之著 『シリア情勢:終わらない人道危機』(岩波書店、2017年)
中東専門家である東京外国語大学の青山先生の本は、シリア情勢を包括的に理解する上ですごく参考になります。僕も先生の本は何冊か読んでいますが、どれもとても分かりやすいし、先生のシリアへの愛が伝わってきます。

3.シリアのためにできることリスト
ちょっと古いのですが、3年前に僕がまとめた「日本からシリアのためにできること」のリストになります。何かの参考になったら幸いです。

4.映画 『この世界の片隅に』
完全なる主観ですが、おそらくいまシリアで起きていることと、シリアの人たちの生活というのは、この映画で描かれている戦時中の日本人の姿とすごく近いのではと思います。ちょうどDVD化もされたタイミングなので、この映画をご覧になりながら、シリア情勢や戦争について考えてみてはいかがでしょうか。


明日からは、クロスフィールズの業務に戻ります!
不在中ご迷惑をかけた方々、申し訳ありませんでした。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
   『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
    ☆ Amazonランキング キャリアデザイン部門ベストセラー1位を獲得
    ☆ ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2016 年間17位
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