松下幸之助さんの「働き方改革」を超えるために

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昨日はOne JAPANという団体の1周年記念イベントに参加してきた。

One JAPANとは「挑戦する個を増やす。組織風土を変える。」をミッションに、数十社の大企業の20-30代の有志が集まるネットワークだ。昨日秋葉原で行われたイベントにはなんと800人(!)が集まっていて、「自分たちから企業を変えよう!」という熱気が会場に充満していた。若手のビジネスパーソンたちがいま「企業で働くこと」を変革しようとする意思の現れなんだと思う。

そして、働き方の変革には政府も積極的に動いている。安倍政権の掲げる「働き方改革」の機運は、幸か不幸か電通の事件もあったことで注目度が高まり、取り組みは一気に盛り上がった。最近では「人生100年時代構想の推進」という掛け声もかかり、リンダ・グラットンさんの著書「LIFE SHIFT」の考え方に基づいた新たな動きも始まろうとしている。

若手と政府のそれぞれの動きに触れていて、肌感覚としても何かが起きようとしているという感じがあって、ここ最近は自分自身もすごくワクワクしている。

そんな中、先日、「働き方改革」を先導する経済産業省の官僚の方と意見交換をさせて頂くなかで、ハッとする話を伺った。その方曰く、過去最も革新的な「働き方改革」が断行されたのは、1965年の松下電器による週休2日制の導入なのだという。

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「世界と戦うには生産性を高め、国際競争力を高めなければ」という考えでこの改革を断行した松下幸之助さんは、社員の勤労意欲と組織の生産性を高めることで世界に冠たる組織を築き上げることに成功した。そして、その動きに他の企業と日本社会とが追随したことで、今日は当たり前になっている「週休2日制」が生まれたのだ。

こんな大胆な変革を起こしてしまう決断力に感銘を受けるとともに、そのとき松下幸之助さんが社員に発したメッセージが印象深い。彼は「一日休養・一日教養」というスローガンを打ち出し、単に2日休むのではなく、生み出された時間で仕事のアウトプットを高めよと社員に伝えたのだ。「週休2日にすることで世界に勝とう」という、明確なメッセージだったのだ。

僕はこの話を聞いて大いに感銘を受けるのと同時に、現在進行中の働き方改革に対してはどこか不安を感じざるを得なかった。

というのも、いま周囲の話を聞いていると、「長時間労働の撤廃」「ブラック企業反対」という声や「自由な働き方の実現」といった労働者側の権利の話が中心で、「生産性の向上」という本質の話があまり聞こえてこないからだ。もちろん「労働時間短縮」や「柔軟な働き方の実現」によって生産性は向上するわけで矛盾した話ではないのだが、どうも究極的なゴールが見失われているように感じる。

松下幸之助さんに習えば、大事なのは「限られた時間の中で生産性を高めるために工夫すること」と、「新たにできた時間をちゃんと教養にあてること」の2つだ。この2つが守られない限り、この「平成の働き方改革」は「ゆとり教育」と同じように、後世か大失敗の動きだったと振り返られてしまうのがオチだと僕は思う。


その上で、もう1つ書いておきたいポイントがある。

「働き方改革」が上手く推進すれば、生産性が高まって労働時間が短縮される。これによって、世の中の人たちは「勤務先で働く以外の時間」をより多く享受できるようになるはずだ。気になるのは、こうして新たに生まれる時間が一体どのように使われるのかということだ。

きっと色々な時間の使い方がされるのだと思う。家族と過ごす時間を増やす人もいるだろうし、兼業・副業をする人もいるかもしれない。はたまた、自己研鑽に勤しむ人や、レジャーや余暇のために当てる人もいるだろう。どの考え方も否定されるべきではないものの、僕にはここでも先の松下幸之助さんの言葉が思い出される。忘れてはいけないのは、「教養」のための時間を増やせるかということだろう。

無論、いまの時代を生きる人にとっての「教養」が何かは、しっかりと考える必要がある。以前は勉学や読書のみが教養だと考えられていた向きがあったが、現代においては「視野を広げること」全般が教養だと考えていいと思う。そして、NPOのセクターにいる自分の立場からは、働き方改革で新たに生まれる時間を「社会との接点を増やすこと」に使うことで視野を広げてほしいと強く思う。

世界で最も早いスピードで少子高齢化が進む日本社会において、何よりも大切なのは「最先端の社会課題に対してソリューションを提示していく」ことではないだろうか。だが、残念ながら多くのビジネスパーソンが、目の前の仕事に必死になり過ぎていて、世の中にどのような社会課題があるのかに対して目を向けたり共感したりする余裕を持てていないのが現状だ。社会課題を機会と捉えれば、このことは大きな機会損失だと考えられる。

どんな形でもよいので、ぜひ働き方改革で生まれる新たな時間を、社会との接点を増やすことに使ってほしい。

ボランティアやプロボノとしてNPOの活動に携わったり、保育園や学校でのPTA活動に積極的に取り組むのもいいかもしれない。あるいは、地域のスポーツチームやお祭りの運営に参加して、地域コミュニティとの絆を深めるのもいい。また、家庭で育児や介護に従事するのも、とても直接的な社会との接点だ。

ぜひ普段の仕事とは違う役割を持つことで、社会の中での自分の役割を考えるきっかけにしてほしい。そうすることで、社会課題を一人称で考えることのできる人の数が増えていき、社会課題を解決するソリューションが日本社会から数多く創出されることにつながっていくはずだ。

働き方改革による生産性の向上を社会課題の解決に繋げていくことこそ、松下幸之助さんが唱えた「一日休養・一日教養」の現代版だと僕は考える。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
   『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
    ☆ Amazonランキング キャリアデザイン部門ベストセラー1位を獲得
    ☆ ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2016 年間17位
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