「LIFE SHIFT」を日本で起こすには?NPOからの地味な提言

LIFE SHIFT

いつも新しい視点をくれるリンダ・グラットン氏の最新作「LIFE SHIFT」を読んだ。名著「WORK SHIFT」はインドで読んで大いに刺激を受けたが(その時の記事はコチラ)、今作もたまたま出張中の海外(フィリピン)で読んだせいもあってか、なんだか色々なことを考えさせられた。

かなりいい加減だが、要旨としては、だいたいこんな感じ。

・これから寿命はどんどん長くなる。たとえばいま20歳の人が100歳まで生きる確率は50%を上回るようになっており、私たちはすでに人生100年の時代を生きている。

・人生100年時代では、「教育→仕事→引退」という3ステージを画一的に進んでいくという従来の生き方では対応できなくなる。人生はもっと多様になり、「人生を模索する期間」や、「色々な仕事を掛け持ちして働く期間」などが、年齢とは関係なく入り組む「マルチステージ」の人生へとシフトしていく。

・寿命が長くなると、貯蓄はこれまで以上に蓄えなければならない。また、これまでよりも長い期間働く必要があるため、変化に対応しながら長期にわたってスキルを磨き続ける必要が出てくる。

・これまでは、時間が余ったりしたときや、老後の時間などは「余暇(レクリエーション)」にあてるという人が多かった。だがこれからは、大学で講座を受けたりパートタイムで別の仕事をしたりして自分に投資する、「自己の再創造(リクリエーション)」のために時間を使う人が増えていく。



どんな世代の人にも、どんな仕事をしている人にも示唆的な内容だと思うので、興味を持ったという人は、ぜひ読んでみることをオススメしたい。以下、ざっくりと自分がこの本を読んで考えたことを書いてみる。


そもそも、この本に書いてある世界観にいち早くシフトしなければいけないのは、世界で最も早いスピードで高齢化が進む日本社会だと思う。そうならないと、日本は40年間もの「老後」を生きる人たちに溢れる社会になってしまって、それは社会全体としても、極限に長い「老後」を生きる人にとっても、不幸でしかない。

だが残念ながら、この本に書かれているような「ダイナミックにキャリアチェンジを繰り返しながら生きる」ようになるというLIFE SHIFTが日本で本格的に起きるには、大きな障壁がある。

日本では多くの人が終身雇用的な働き方に慣れきっていて、人生のステージを変えようにも、「いまの企業で働くこと」以外の選択肢を思い浮かべられないケースがほとんどだからだ。定年を迎えて突如会社の名刺がなくなってしまうと、有り余る時間を埋める手段はといえば、近所の公民館で時間を過ごしたり、あるいはゴルフや旅行に明け暮れるくらいになるという人はすごく多いのではないだろうか。

もちろん人それぞれの人生観であり、そのこと自体を否定したいわけではない。だが、社会全体がこうした状況を続けていたら、あまりにも社会としての生産性が低すぎると僕は思うのだ。

企業の側も、大量採用した世代の社員が全員定年まで勤め上げる(つまり、企業として給与を払い続ける)ことの恐ろしさには当然気付いている。仕事柄、僕は企業の人事部の人たちと話したりすことも多いが、「シニア層の従業員の多くには、早い段階で幸せなセカンドキャリアを歩んでもらうのがベスト」と企業側も考え始めているようだ。

だが、日本の真面目なビジネスパーソンたちは「自組織のために最後まで精一杯働くのが美学」という姿勢を頑なに貫いており、その良くも悪くも盲目的な視点がために、なかなかキャリアチェンジは起きにくいというのが現状だ。現時点では、有効な処方箋は見つかっていない。


ここで、NPOの世界に身を置く人間として、ひとつ非常にシンプルな提言がある。

地味ではあるが、ボランティアやプロボノというかたちで社会にかかわる機会をもっと増やしてはどうだろうか?大袈裟だが、これによって日本でもLIFE SHIFTが推進されていくと僕は思うのだ。

NPOの活動に携わることは、「自分の人生にとって何が大事なのか」を普段とは違う視点で考えるキッカケにもなる。また、自分が普段所属している組織の人たちとは全く違うコミュニティの人たちから刺激を受けることもでき、視野やネットワークが広がるからだ。何を隠そう、僕自身も青年海外協力隊というボランティア経験によって人生に対する視野やキャリアの選択肢が大きく開けたという原体験を持っている。

こちらは、総務省が5年おきに行っている社会生活基本調査(平成24年度版)からの抜粋で、男女・世代別でのボランティア活動の参加率をグラフ化したものだ。

ボランティア

勤労世代のボランティア参加率は概ね30%程度という水準だ。よくよく見てみると、30-45歳の女性でボランティアの参画率がグンと上がるのが見て取れる。おそらくは結婚・出産による退職や、子育ての大変な時期が終わるなどのライフステージの変化が影響しているのだろう。一方で男性は比較的どの世代でも低調で、30-45歳での上昇も女性に比べるとなだらかだ。ただ、定年退職を迎える65歳以降では女性を逆転していたりもしている。

個人的には、特に社会との断絶が激しい30~50代のビジネスパーソンには、もっともっとNPOの活動を通じて、会社以外の社会に直接的に触れて欲しい。そうすることで、定年後の自分のキャリアについて考え始める準備にもなるはずだし、もっと違う人生の時間の使い方に気付いて、人生を豊かにする選択をする人が増えるとも思うからだ。

折しも、時代は少しずつ変わり始めている。政府による「働き方改革」の推進や、一部企業による「副業解禁」「週休3日制」などといった流れは、多くの人に会社以外で時間を過ごす働き方を後押ししている。また、ブラック企業の長時間労働に対する批判の高まりは、「いまの会社にすべてを捧げるモデル」からの脱却に向けた追い風だ。

こうした動きでこれから確実に増えていくだろう働く人たちの「自由時間」を、ぜひともNPOの活動に積極的に向けて欲しいと切に思う。同僚と飲みに行ったり、いまの仕事に関する本を読んだりする時間だけにするのではなく、ぜひとも、新しい世界のドアを開けることにも使って欲しいと思う。

国としても、NPOが発行するボランティア証明書に記載された時間に応じて税金を控除する制度を導入するとか、あるいは、長期ボランティアに従事する人向けの助成金や社会保障制度の拡充とかをしてはどうだろうか。また、企業としても、兼業・週休3日制・長期ボランティア制度などを更に推進するとともに、NPOでのボランティア経験を何らかの形で人事考課に組み込んでもいいかもしれない。

いまこそ、長寿社会ニッポンから、世界に先駆けたLIFE SHIFTを起こし始める時だと思うのです。そして、そこに意外とボランティアやプロボノが効くと、僕は強く信じています。嘘だと思った人は、ぜひ自分の目で確かめて下さいませー!

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以上。
なんだか長くなりましたが、最後まで読んでくださった方には、心から感謝!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
   『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
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