偉大なNPOの条件

『世界を変える偉大なNPOの条件』という、少しマニアックな本を読んだ。

傑出した企業の分析を行った『ビジョナリー・カンパニー2』のNPO版とも呼べる内容で、
全米にある数十万のNPOから、中でも社会に最も大きな影響を与えた団体を選び出し、
それらの団体に共通する「6つの原則」についての分析をした本だ。

世界を変える偉大なNPOの条件――圧倒的な影響力を発揮している組織が実践する6つの原則

実践者ではなく研究者が書いた本ということで、実はあまり期待せずに読んだのだけど、
いちNPO経営者として、一体どれだけ目からウロコが落ちるのかという内容だった。

教科書的なNPOについての概念論ではなく、今の時代にNPOが目指すべき姿について
力強く語られていて、「よくぞ言ってくれた!」という内容にあふれていた。

中でも示唆に富む「政策アドボカシーとサービスを両立すべき」という部分については、
NPOフローレンス代表の駒崎弘樹さんのブログに素晴らしすぎる書評があるので、
僕は、この部分以外で特に印象に残った点について3つほど書いてみたいと思う。

(※ 時間のない方は以下の文章はすっ飛ばして駒崎さんの書評を読んで下さいませ。笑)


① NPOは民間企業よりもNPOから学ぶべし

NPOはボランティア活動であって企業活動とは全く別物だというのが通説だったが、
最近は日本でも「NPOは民間企業から学ぶべき」という言葉が聞かれるようになってきた。

しかし筆者は、NPOが民間企業の実績から学べることは
確かだとしながらも、「それだけでは十分ではない」と言う。

民間企業の経営手法が生み出せるのは斬新的なステップであり、
飛躍的なステップや社会変革ではないというのが、筆者の主張だ。

言われてみれば当たり前だが、民間企業は利益の最大化がミッションなわけで、
社会変革のプロではない。だとすれば、民間企業からは一部の手法を学ぶことは
できるものの、もっと大事な社会を変える方法を学ぶことはできないのである。

一方で、この本に紹介されているような多大な影響力を持つNPOを見てみると、
民間企業や行政には真似できない社会的インパクトを生み出した例に溢れている。

よって、本当に社会を変えたかったらスゴいNPOから学ぶべきというわけだ。

最近になってNPOを起業した自分としては、やはりビジネスの手法の方が
NPOの手法よりも優れているという基本的な思想をどこかで持っていたような
気がするだけに、このメッセージには頭を鈍器で殴られたような感覚がある。


② 競争ではなく協力すべし

「同じパイを奪い合う」のではなく「パイの大きさを一緒に広げよう」というのは
よく聞く話かもしれないが、実際に経営をしてみると、これはなかなか実践が難しい。

長い目で見ると競争するよりも協力する方が良い戦略ではあったとしても、
その戦略は必ずしも短期的な利益に結びつくわけではないし、むしろ矛盾したりもする。

でも、筆者によると、大きな影響力を持つNPOの経営者は、そんな小さなことは
決して言わないのだそうだ。彼らは目先の短期的利益の先を見通していて、
競わずに連携すれば、もっと壮大なことが達成できると心から信じているのだ。

『ビジョナリーカンパニー2』において、偉大な企業を経営するリーダーたちは
「過大な自負心を持つことなく、偉大な企業をつくるという大きな目標に邁進する」人物であり、
「その野心は何よりも組織に向けられていて、自分自身には向けられていない」と描かれた。

この本の筆者は、影響力を持つNPOの経営者は偉大な企業の経営者よりも一歩進んでおり、
「自分自身よりも組織の利益を優先させ、更に社会全体の理想を優先させる」と書いている。

これまた、未熟な自分には刺激的すぎるメッセージだ。


③ 中道派的な解決策を重視すべし

3点目は、本の中ではごく簡単にしか触れられていなかった点だけど、
日本のNPOにとっては非常に大事なメッセージだと思うので紹介したい。

アメリカでも日本でもそうだが、NPOの活動の発端は60年代・70年代の反戦デモにある。
こうしたデモを率いた社会運動のリーダーたちが、NPOという組織の牽引役を担ってきた。

そのせいもあってか、特に創世記のNPOには、非常に崇高なイデオロギーを掲げて
実現可能性があまり高くない主張をするデモを実施している団体が多かった。

しかし、今の時代のNPOが目指すべきなのは、極端な立場を支持するのではなく、
多くの市民に幅広く訴える中道派的な解決策を掲げて結果を出すことだと筆者は主張する。

無論イデオロギーを掲げること自体を否定するわけではないが、
それが極端すぎて非現実的なものでは結局は世界を変えられないわけで、それであれば、
実際に変化を起こすことのできる主張をすべきという著者の考え方に、僕も賛成だ。


と、ここまで印象に残ったポイントを書いてきたけれど、全てに共通しているのは、
「世の中に影響を与えるという結果を出すことにこだわる」という姿勢だ。

最後に、この本でも引用されていたアショカ財団創設者の
ビル・ドレイトンの言葉を紹介したい。

社会起業家は、人に魚を与えるだけでは満足しない。
魚の釣り方を教えるだけでも満足しない。
彼らは漁業全体に革命を起こすまでは止めないだろう。


うーん、この言葉、かなりシビれます。


NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
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