予言の自己成就

社会学を少しだけカジッた自分としては少し慣れ親しんでいる考え方に、
マートンの「予言の自己成就(self-fulfiling prophecy)」というものがある。

このようになるのではないかといった予期が,無意識のうちに予期に適合した
行動に人を向かわせ,結果として予言された状況を現実につくるプロセスをさす。
 
事例としては,1973年の石油ショック時に自己充足的予言によるパニックが
起こったのが有名である。現実には存在していなかった「物不足」であったが,
「物不足になる」という予期的不安から,人々が一斉にスーパーに走り,結果
として予言どおりの全国的な「品不足」を現出させた。

また教育場面では教師がもっている生徒に対する期待が,実際にその期待に
あった生徒を作り出してしまう現象などが指摘されている。

(『有斐閣心理学辞典』より抜粋)


要するに、「世の中はこうなる!」とか「あなたはこういう人だ!」という予言を
誰かが信じると、予言が嘘かホントかは別として、次第にその予言が現実のものに
なっていくという考え方だ。ちなみに、血液型の性格診断や星座占いというのも、
この予言の自己成就の一種だと考えられている。

で、いったい何が書きたいのかというと、起業してからというもの、
この「予言の自己成就」に近いことを感じることがすごく多いということだ。


ある夢のリストの話

たとえば、「自分たちはこういう目標に向かう!」と宣言しておくと、
本当にその通りになってしまうこともある。(勘違いの可能性は大きいけれど…)

1つの例を言うと、起業したばかりの頃、ある人から「世界中の誰でも選べるとしたら、
この人にアドバイザーやサポーターとして支えられたいという人を書きだすといい」
という助言をもらい、自分なりの「ドリームチーム」のリストをつくったことがある。

その時にリストアップしたのは、だいたい30人くらい。そのリストの中の人で、自分の
事業について知っていた人は数人で、ほとんどの人には起業することも話してなかったし、
まだ会ったことのない人や、本で読んで存在だけ知っている憧れの人も沢山入っていた。

そして、それから約1年。

久々にそのリストを見返して、本当に驚いた。そのリストに載っていた30人の1人残らずに、
自分たちの事業について説明する機会を持てていたし、多くの方に「君たちを応援したい」
という言葉をもらえていた。1年前は話したこともなかった人が、今は実際に自分たちの
アドバイザーになって、定期的に経営指南をして下さったりもしている。

これは、本当にすごいことだと思う。

断言してもいいけれど、あの時にリストを作っていなかったら、絶対にこうはなって
いなかった。途方もない夢のリストをつくったように感じていたけれど、あれは自分の
目指すべきゴールイメージを絞り込む行為だったんだと思う。

正直、会社を飛び出して自由の身になれば、ある意味どんな人とでも会うことはできるし、
可能性は無限大だ。でも、それは同時にあいまいな状況でもあって、無限の可能性の中で
迷子になってしまって、一向に前に進めなくなってしまうことも多い。

それを、たとえどんなに無謀なものだとしても、リストという「目に見えるもの」にする
ことで、明確な目標としてイメージすることができたのだと思う。あのリストがなかったら、
「ドリームチーム」のリストにいる人たちは、今も憧れの人のままになっていると思う。


『未来日記』としてのメディア

もう1つ、メディアこそが最強の「予言の自己成就」の装置だと、すごく実感している。

幸運なことに、ここのところメディアの方々にも自分たちの活動を注目して頂いていて、
テレビ・新聞・雑誌・ラジオをはじめとした取材を受ける機会が増えてきている。

そんな時、自分たちのような実績のない団体の場合、「何をやっているか」ではなく
「何を目指しているのか」という点に焦点があたる取材になることが多い。

すると自分たちも当然、「こういう世界を創りたい」という夢を取材の中で語ることになる。
結果、メディアに登場すると、「こんなスゴいことが起こりつつある!」といった論調の、
ある意味では『未来日記』的な様相を呈した記事になっていく。

でも不思議なもので、世の中の人はこの『未来日記』を読んで、「なるほど世の中はこう
進んでいるのか」と認識し、メディアに書かれた未来が現実のものになっていくのだ。

実際、この数カ月間でも、「この掲載のされ方は自分たちの実態よりもだいぶ背伸びした
内容だなぁ」と感じたことが何度かあったが、その度に、その数週間後にその掲載内容が
本当にその通りになってしまうという奇跡的な出来事を何回も経験した。



もちろん、すべての予言が自己成就するなんてことはありえないけれど、
僕が思うのは、誰かが予言しない限りは、それは現実にはならないということだ。

これからの日本社会が良いものになっていくかどうかは分からないけれど、
良いものになっていくと信じない限りは、良い方向性には進んでいかないのだ。

というわけで、自分はこれからも無謀なくらい前向きな予言を唱えたいと思う。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
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