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社会課題解決とビジネスとの関係性が深化した2018年

さて、2018年もそろそろ終わりを迎えるということで、僕が活動する社会課題解決の分野で僕が気になった今年のトレンドについて書いてみたい。

振り返ってみると、なにか重大なニュースがあったわけではないものの、社会課題解決とビジネスとの関係性がまた一段、大きく変容した年だったというのが印象だ。一言で言えば、大企業もベンチャー企業も関係なく、ビジネスセクターのプレイヤーが社会課題の解決を事業機会であると明確に打ち出し、そこに向けて本腰を入れて動き出した年だったと思う。

大企業と社会課題解決の新たな関係性

マイケル・ポーターがCSV(Creating Shared Value)のコンセプトを世に出し、企業が戦略的に社会的価値の創出に取り組むべきだと主張し始めたのが2011年。欧州の先進的な企業を中心に盛り上がったこの流れは、日本にもしっかりと到来した。日立製作所やユニクロ、味の素といった先進的な企業がこの流れに反応し、事業戦略の最重要アジェンダとして「社会課題の解決」を掲げた。そして、こうした動きは確実に他の日本企業にも影響を与え始めている。

加えて、2015年に国連が批准したSDGs(Sustainable Development Goals)は企業による社会課題解決の動きを一気に加速させた。いまやSDGsの要素を中期計画に入れ込んでいない大企業はほぼないのではないかというほどだ。まだまだSDGsという言葉と17個のロゴだけが先行していて、SDGsの目指す世界観をバックキャストさせて事業に活用できているような企業は一部しかないものの、それでもこの動きは画期的だ。

更には、マーケットも企業が社会課題解決にコミットするようプレッシャーをかけ始めている。ESG投資は一部の感度の高い投資家のファッションだったが、2018年には世界最大の資産運用会社であるBlackRockのCEOであるLarry Finkが上場企業の社長向けに「サステナビリティや長期的な目線を持つべき」という趣旨のレターを出すなど、風向きは確実に変わっている。日本でもGPIFが2015年にPRI(2006年に国連が定めた責任投資原則)に署名したことで、機関投資家を中心にマーケットの本気度も一気に高まった。当然ながら、こうした投資家からのプレッシャーにより、大企業の側も本気度を高めてきている。2018年はプラスチックゴミの規制が大きく動いたり、つい先日も投資家からのプレッシャーで商社が石炭事業からの撤退を決めるというニュースがあったが、これらもまさに新しいタイプの市場からのプレッシャーが企業の行動を大きく変え始めたことを示していると言える。

僕は普段から日本の大企業の方々との接点が多いが、こうした動きが複合的に作用したことにより、現場レベルでもここ数年で一気に潮目は変わった。

特に2018年は、経営企画や新規事業、R&Dという部署が社会課題の解決に本腰を入れ始めたことを感じる。これまで社会課題の解決といえば、CSRの部署が本業とは離れたところで細々と取り組んでいることが多かったが、そこが変わってきた。投資家や社会からのプレッシャーを受けて考えを変えつつある経営陣が、これからの事業を考える本丸の舞台に対して「社会課題の解決にコミットせよ」とメッセージを与え始めているのだ。トヨタ自動車や本田技研など、社会課題に本腰を入れる企業では、CSRの部署を廃止して経営企画やマーケティングの部署に発展的に統合する動きが目立っているが、おそらくこの流れは更に加速していくはずだ。

ただ一方で、こうした部署を担う人材はNPO/NGOとの接点などもこれまで薄かった人たちだ。上層部から急に社会課題をビジネスにせよという指示を受け、何をすべきか分からずにとまどっているというのが現実だろう。「社会課題とは何か」のイメージをまだ十分に持ちきれていないし、どのような世界を創っていくべきかを一人称で考えきれていない。これから日本の大企業が社会課題を機会として捉えて事業展開をしていくことを考えると、このあたりがボトルネックになると僕は考えている。クロスフィールズとしては、幹部層に社会課題を体感する機会を提供することなどを通じて、こうした流れが更に加速していくことに貢献していきたいと考えている。

ベンチャー企業と社会課題解決の新たな関係性

いわゆるスタートアップの世界においては、ベンチャー企業が社会課題の解決にコミットすることはある種の常識になっているように感じる。

現在のベンチャーの世界を牽引するミレニアル世代の起業家たちには、「単に金を稼げればいい」という考え方の起業家はほぼ存在しない。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグに憧れて起業家を志した現在のスタートアップの騎手たちは、自分たちの事業や技術を通じて「社会を変えたい」と心底考えている。僕が親交を持たせて頂いているベンチャー企業の起業家の皆さんは、NPOやNGOの世界のリーダーたちと同じような公益的な想いを持っているように感じる。

また、そもそもスタートアップとは何かしらの社会のUnmet Needs(満たされていないニーズ)を解決することで事業を行う組織体である。特にほとんどの市場が成熟している日本においては、社会課題の解決こそがある意味では唯一の残された勝負領域になっている側面があると思う。

スタートアップのエコシステムがかなりの程度整ってきた日本において(そろそろピークアウトしているとも言われているが…)、これからの5-10年でどれだけ多くの社会課題がテクノロジーを駆使したスタートアップによって解決されていくのか。個人的には、ここに大いに期待したいと考えている。

ただ、意外なことに、まだまだベンチャー企業とNPO/NGOとの事業上の接点は多いとは言えない。これまで企業とNPO/NGOの協働と言えば、企業側の担い手は常に大企業であったが、これからはベンチャー企業がNPO/NGOとともに社会課題の解決に乗り出すケースを増やしていくべきだと思う。


以上、大晦日に調子を乗って長々と書いてしまったが、2018年はビジネスと社会課題解決との関係性が大きく動いた年だった。明日から始まる2019年はオリンピックの前年にあたる年であり、さまざまな社会の基盤がアップデートされる年だと言われている。

ぜひ、今回書いたような流れがより確かなものとなり、日本社会から多くの社会課題を解決する動きが生まれてくることを願ってやまない。僕としても、クロスフィールズの事業を通じてそうした動きに全力で貢献していきたいと思う。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715
※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
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