若い世代の国際協力離れと、この世界の片隅でいま起きていること

最近なんとなく感じていることを、ちょっとだけ書いてみたい。

仕事柄、僕は講演をさせて頂く機会がそれなりにあり、最近は大学生・高校生を対象としたものも多かった。で、その聴衆の数や反応などから、国際情勢や国際協力の分野に対する関心が急速に薄まっているなぁという、そんな危機感を感じている。(まぁ、僕の人気がなかったり、話がつまらないというだけかもしれないけど...)

ちょっと前までは、「こいつは面白いヤツだな」とか「将来デカいことやりそうだなぁ」と思うような学生が国際協力の分野にもすごく多かった。

でも、最近は感度の高そうな学生たちは社会貢献の分野を敬遠していて、テクノロジーやインターネットの分野で新しい産業を起こすことに関心を持っていることが多い気がする。また、社会貢献に関心がある層も、興味を持つキーワードは「地方」「ローカル」「復興」などが多く、国際的な領域に関心のある層は、質・量ともに下降傾向だと思う。

もちろん、テクノロジーや地方に目を向ける若い世代を否定するつもりはない。でも、結果的に国際的な活動に目を向ける若い世代が減ってしまうことには、なんとも言えない怖さを感じている。これからの未来をつくるのは当然ながら若い世代なわけで、そうした世代が世界にも視野を広げられていることは、健全な未来をつくる上で不可欠なことだと僕は思うからだ。

世界に目を向ければ、いまこの瞬間にも、いてもたってもいられなくなるようなことは沢山起きている。

たとえば僕が住んでいたシリアという国では、紛争状態が始まって6年目を迎えている。定期的に連絡を取っている友人によれば、あらゆる状況が悪化を続けている。生活はどんどん苦しくなっていて、日用品を手に入れるのも難しくなっている。石油などは闇市場で平時の10倍以上の値段がついていて、寒い冬を越すのは厳しい状況だ。最近は断水も多く、水は配給に頼るようになっているそうだ。また、男性たちは軍からの突然の徴兵が怖くてなかなか外を出歩けない。そんな最低な状況だ。

2016年、日本では映画『この世界の片隅に』が大ヒットした。広島県の呉市を舞台に、戦争で翻弄される人々の生活の有り様を丁寧に描いた、メッセージ性の強い素晴らしい映画だ。きっと多くの日本人が、映画に涙しながら「やはり戦争は恐ろしい」「日本人もああした暗い過去を持っていて、二度と繰り返してはならない」といった感想を持ったはずだ。

でも、僕があの映画を観て真っ先に想起したのは、シリアで暮らす友人たちのことだ。きっとシリアには、今日この1日を、あの映画に描かれているような壮絶な状況のなかで過ごしている普通の人たちが沢山いる。映画で描かれているのは「日本という国で昔に起きた話」や、「未来にまた起こってしまうかもしれない恐ろしい話」ではなく、「この世界の片隅で、いま現実に起きている話」だと思えてならなかった。

シリアの話は、1つの例でしかない。世界を見渡せば、グローバル化した社会のなかで、今日一日を様々な形で生活を送っている人たちがいる。そうした情景に対して想像力を持つことの人がどれだけいるかが、日本と世界とが、過去に起きた悲劇を繰り返さないためには決定的に大切だと僕は思う。それこそが、急速に内向き化を進める世界に対してあらがう唯一の手段ではないだろうか。

テクノロジーがこれだけ進化しても、残念ながら、世界はちっとも良くなっていない。
「この世界の片隅」にも興味を持ってくれる人が増えて欲しいと、切に思う。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
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