時代の転換を告げる感動的なビジネス書 『CSV時代のイノベーション戦略』

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非常に素晴らしい本を読んだので、ぜひ紹介したい。

ビジネス書なるものを読んでこんなに鼓動が高鳴ったのは
初めてのことだし、僕にとっては、感動的でもある本だった。

"いつの日か、ビジネスの世界とNPO/NGOの世界が
繋がって新しい価値が生まれる時代がくるはず・・・"


そんな時代が来ることを夢想してニヤニヤしていたのは
きっと僕だけではないと思う。多くのNPO関係者、
多くの企業関係者が、そんな夢を共有しているはずだ。

そんな時代が到来したという素晴らしいニュースを、
この本は、冷静な観点から、でも痛烈に知らせてくれている。


本書が扱うのは、経営学の権威であるマイケル・ポーターが
提唱するCSV(Creating Shared Value)という概念だ。

CSVについては昨今日本でも議論が活発に行われているが、
正直なところ、これまではCSR活動の延長として語られたり、
あるいは「日本企業は昔も今もCSVを実践してきている」という
観念論で骨抜きにされてきたのが現状ではないだろうか。

しかし、本書は違う。

まずもって本書に価値があるのは、筆者の藤井剛氏が、
デロイトトーマツコンサルティングのパートナーということだ。
いわゆるビジネスの世界のど真ん中で戦っている著者がCSVに
注目し、純然たるビジネスの視点からCSVという概念の解説書を
出したという事実が、「CSR延長論」との決別を意味している。

つまり、社会に良いことをビジネスに繋げられたらいいなという
視点ではなく、「儲けるにはCSVが必要」という、これまでとは違う、
ある意味で斬新なピュアビジネスの視点でCSVが語られているのだ。

また、「日本企業は昔も今もCSVを実践している論」に対しても、
本書は真っ向から挑んでいる。企業がいまイノベーションを生み出す
にはCSVの視点が重要で、その視点が持てていないから日本企業は
革新的な領域で全く勝てないのだと、本書は明快に主張している。


本書の詳しい内容はこの記事の中ではとても紹介しきれないが
(僕の本は本当に付箋とメモ書きだらけになってます...笑)、
上記のようなピュアビジネスの視点から、GEやネスレといった
欧米企業がCSVを実践してどのような成功を収めているのか、
また、日本企業がCSVを実践するには具体的にどんな方策を
取るべきかなど、非常に示唆的な内容が多く書き記されている。

ぜひ本書は、CSVという概念にもともと興味のある方だけでなく、
企業経営者や新規事業立ち上げを担当されている方々など、
これまで社会課題解決やNPO/NGOと無縁だった方々にこそ、
じっくりと味わって読んでもらうことを僕はお勧めしたいと思う。


また同時にNPO/NGO関係者も、この本は読んでもらいたい。

NPO/NGOがビジネスの世界からどのようなことを期待されて
いるのか、今後両者はどのような協業をしていくべきなのか、
本書ではそのような多くのヒントが提示されている。

実は本書の中には、「日本はNGO後進国だ」という趣旨の
ことが書かれている。企業が協働しようと思っても、協働できる
体力・スキルのあるNGOが日本には少なすぎるというわけだ。

残念ながら、この指摘はその通りだと僕は思う。

これから新しい時代が幕を開ける中で、NPO/NGOが社会の中で
どのような役割を果たすべきで、そのためにはどれだけ成長
する必要があるのか…。そんなことを真摯に考えるのに、本書は
とても良いきっかけになると思う。(事実、僕は相当凹みました)


というわけで、この「感動的なビジネス書」は、ぜひ様々な立場の
人たちに読んでもらいたいし、この本に書かれていることを題材として、
今後のビジネスのあり方などを周囲の人たちと議論してもらいたい。

本書に書いてあることを様々なセクターの人たちが理解し、そして
少しでも動き出せば、時代は確実に変わると僕は心から思います。

とにかく、お勧めの本です。

この記事を読んで買いたくなった人は、こちらからどうぞ!


NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。

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トライセクター・リーダーとは?

ちょっと前だけど、Harvard Business Reviewの2014年2月号に
「トライセクター・リーダー:社会問題を解決する新たなキャリア」
という特集があった。最初は記事を読んでもフーンというくらいの
感じだったけど、なんだか最近この言葉がすごく気になっている。


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http://www.dhbr.net/articles/-/2331
(↑興味ある人は、ここから該当の記事が購入できるらしいです)


そもそもトライセクター・リーダー(Tri-sector Leader)とは、
企業・行政・社会という3つのセクターの垣根を超えて活躍する人材
のことを指すのだそうだ。

さて、ではなぜいまそんな概念に注目が集まるのか。

社会課題を全て行政が解決する時代は終わったが、かといって
民間企業が行政に変わって全ての課題を解くことはできない。
そこでNPOをはじめとした社会セクターにも注目が集まってきて、
セクター間の境目というものは急速に曖昧になってきている。

ここまでは、僕のマニアックなブログを読んでくれている方ならば
きっと賛同してもらえる時代認識だと思う。(と、信じております…)

さて、そんな背景を考えると、これからは各セクターの知見を
集結させていくことが益々大事になってくるわけで、そんな時に
必要なのが、企業・行政・社会という3つのセクターそれぞれに
精通しているトライセクター・リーダーなる人材だというわけだ。

(余談ですが、このリーダー像はクロスフィールズという組織が
 事業を通して創りたいリーダーの姿とも極めて近しいです)

なお、論文の中ではトライセクター・リーダーに共通した
特徴として、以下の6つの要素が挙げられている。

1. 理想と実利をともに追求する
2. 無関係に見える状況の類似性を見抜く
3. 状況判断力に優れている
4. 知的専門性を高める
5. セクター横断的な人脈を築く
6. 心構えを忘れない

僕にはピンと来るものもそうでないものもあったが、
特に「3.状況判断力」は確かにそうだなぁと思ったりする。

たとえば、僕がトライセクター・リーダーという言葉を聞いて
イメージする人たちというのは、何かの課題を見つけた時に、
その課題を「誰が」「いつまでに」「どのように解くべきか」
という答えを出すまでのスピードが圧倒的に早いし、正確だ。

「この国の課題の場合、民間企業が取り組むのはしんどいよ。
国連の××部隊が出てきたら半年くらいで目処を立てられる
んじゃないかな。NGOの出番はその後だと思うなぁ」

「雇用問題のこの課題は、まずは行政が法整備をしないと
企業とかNGOがいくら騒いだってだめだよ。確か××省の
事務次官の××さんがこの課題にはアツかったはずだから、
まずは今月末までに彼と会議体を持つのが大事だと思う。
あ、××社の××社長にも会議には絶対に出てもらおう」

こういう判断を瞬時に導き出せる肌感覚を持っていることは、
これからの時代を切り拓くリーダーには必要なことだと思うし、
それには、色々なセクターをまたいで働いた経験が必須だ。


ちなみに僕の場合、ビジネスの世界にも少しは足を突っ込んだ
ことのある社会セクターの経営者なわけで、そのことは企業と
協働を進める上ではかなりプラスに働いている。

でも一方で、自治体や省庁だったり国際機関などといった
公的セクターの視点が僕には欠けていて、そのことがNPOの
経営者として大きな弱みになっていると最近すごく感じる。

21世紀を生きるNPOの経営者としては、もっとバランスよく
セクターの垣根を超えて物事を考える力が必要なんだと思う、、、

ちなみに、Harvard Kennedy Schoolのジョセフ・ナイ教授は
トライセクター・リーダーのことを「トライセクター・アスリート」
呼んでいるらしいが、直感力に優れた行動力溢れるリーダー
という意味合いで、僕的にはこの表現がすごくしっくりと来る。

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↑ジョセフ・ナイ教授


最後に、論文のなかで著名なトライセクター・アスリートとして
名前が挙げられていたアメリカ人は、たとえばこんな人たち。

バラク・オバマ氏 (政治家になる前は人権派弁護士として社会活動を展開)
ビル・ゲイツ氏(マイクロソフト経営者から慈善財団経営者へ)
アル・ゴア氏(政治家から慈善活動家へ転身、今は企業顧問も掛け持ち)
シェリル・サンドバーグ氏(世界銀行から民間企業の世界へ)

最後に、日本のトライセクター・リーダーとして僕の頭に思い
浮かんだ人たちの名前を、独断と偏見で勝手に挙げておきたい。
(一応、順番だけは五十音順で並べてみました)

・駒崎弘樹さん
言わずと知れた社会起業家の草分け的存在。学生時代はITベンチャーを
経営し、その後NPO法人フローレンスを立ち上げて社会セクターに転じる。
政治や行政とも絶妙な距離で付き合いながら社会変革を仕掛け続ける。

・高橋大就さん
外務省からマッキンゼーに転身し、現在はオイシックスの海外事業部長と
「東の食の会」という社団法人の事務局代表を兼任するという凄まじい職歴。
まさにトライセクター・アスリートの申し子といったキャリアを歩んでいる。

・中村俊裕さん
マッキンゼーを経て国連(UNDP)に転じ、東ティモールやシエラレオネなど
途上国の開発支援で10年間従事。その後、国連のときの仲間たちとともに
米国NPO法人コペルニクを立ち上げ、国際協力の世界に新風を巻き起こす。

・藤沢烈さん
飲食店経営、マッキンゼーを経てコンサルティング会社を起こして独立。
震災を機に社会セクターでの活動に活動の軸を移し、RCF復興支援チーム
という社団法人の代表として、時には政府の官僚として復興現場で活躍中。

・船橋力さん
伊藤忠商事を経てウィル・シードを設立。その後、Beyond Tomorrowや
TABLE FOR TWO InternationalなどといったNPOの立ち上げ・経営に参画し、
現在は文科省の官僚として「トビタテ!留学JAPAN」のプロジェクトを指揮。


きっとこういう人たちが、これからの社会を面白くしていくんだと思う。
そして、僕もこんな人たちと一緒に、頑張っていきたいと思います!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。

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