大いなる危機感と2017年の誓い

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もはや1年の12分の1が過ぎようとしているものの、毎年欠かさず書いていることもあり、恥を偲んで、今更ながら2016年の振り返りと今年の目標を書いてみたいと思う。(年末年始に納得いく文章が書けないまま、ダラダラと時間が過ぎた次第です…)

2016年は、実にいろいろなことが起きた年だった。

愛する広島カープが25年ぶりに優勝して狂喜乱舞してみたり、トランプ大統領の誕生に大きなショックを受けたり。また、個人としては、尊敬していた祖父が亡くなったり、第2子が生まれるという大きな人生での出来事もあった。8月には経営者として1ヵ月間の育休を取るなど、本当に色々なことを経験した年だった。

そして、経営するクロスフィールズについて言えば、2016年は創業5周年を迎えた年だった。

この節目の年に、基幹事業である留職プログラムは導入企業が30社を超え、参加者数は大台である100人を突破した。まだまだ小さな規模だが、創業期は松島とたった2人だった組織は、15人の仲間たちが常勤で働く組織になった。

2016年はメディア露出の多い年でもあった。NHK World「RISING」テレビ東京「ガイアの夜明け」で留職の特集をして頂き、朝日新聞にも一面にデカデカと取り上げて頂いた。ハーバード・ビジネス・レビューでは僭越にも「未来をつくるU-40経営者」の20人にも選んで頂いた。

また、創業ストーリーと事業にかける想いを綴った初めての著書も、3年間以上にわたる構想期間と血の滲むような執筆期間を経て、無事に世に送り出すことができた。そして、嬉しいことに、ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書の年間17位にも選ばれるなど、多くの反響をもらうことができた。

と、こうして書いてみると、いかにも順風満帆に見えるかもしれない。

「大活躍ですね!」
「乗りに乗ってますねー!」

実際、多くの人たちからそんな言葉をかけて頂く。たしかに、外から見ればそう見えるだろうと思うし、実際、事業が加速することを目指して、敢えてそんな風に見えるように体外的なコミュニケーションを図ってきたという面もある。

でも、内実は全然違う。

留職の事業は、いま正念場を迎えている。留職が事業モデルとして成立するということは、曲がりなりにもこの5年間で証明できた。だがコンセプトの真新しさで受けていた時代は終わりを迎え、本質的な価値のあるプログラムなのかどうかが、いままさに問われ始めている。

パートナー企業と派遣先団体からの高い期待値に応え続けていかない限り僕たちの事業は決して続いていかないという、そんな厳しい事実を日々嫌というほど突き付けられている。正直、今年どれくらい事業面での成長が見込めるかは、まだ確信が持てていない。昨年メディア攻勢を仕掛けたのは、そうした危機感の裏返しでもあった。

それに、このまま留職の活動を拡大していけば理想の未来がやってくるかというと、胸を張ってYESと言えない自分たちがいる。無論これまでの活動には大いなる意義があったと思っているが、目指すべき到達点を考えれば、まだまだ自分たちにはやるべきことが沢山あると痛感している。進めば進むほど問題の根深さが分かってきて、ここからの道のりの険しさに目眩がするような感覚だ。

また、2016年は組織面でも潮目が変わった年だった。創業期を支えてくれた4人のメンバーが卒業し、新たに5人のメンバーが組織に加入した。また、内的外的な要因から2回にわたる組織体制の大幅な変更も経験することとなり、組織内のダイナミクスには地殻変動的な変化があった。ここ数年ずっと感じていることではあるものの、この過程では、自分自身のマネジメント能力の限界にも痛いほどに向き合った。

事業面でも組織面でも、まさに正念場を迎えた年だった。なんというか、まるで創業期に戻ったような、この先どうなっていくか分からないという感覚を感じながら、そんななかで何とかして踏み留まったような感覚だ。(大変だった分、人間として一回りくらいは成長できたようにも思うけれど…)


そして迎えた2017年。

クロスフィールズでは、毎年恒例の行事として、働きはじめの日に初詣に行き、絵馬に各自が選んだ漢字を書くというイベントをする。今年は調子に乗ってみんなで書き初めもした。

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僕が選んだ今年の漢字は、「攻」。(ちなみに去年は「変」と「陰」だった)

Daichi_Cross Fields New Year Kick-Off


事業面でも、組織面でも、現状を否定して新しいことに挑戦し、様々なことを試したい。失敗してでも、前に進む意識を持ちたい。外的要因によって「変わらざるを得ない」というなかで迎える変化では、力が弱い。そうではなく、未来を見据えて、自分たちが起こしたい変化を起こすために、内なる変化を主体的に生み出すというのが、今年やりたいことだ。

事業面では、まずもって、クロスフィールズが掲げるビジョンとミッションを改めて定義し直したい。そして、留職の事業をもう1段階進化させるとともに、「留職のクロスフィールズ」をいい意味で脱却すべく、新たな事業も本格的な展開を始めたい。

組織面でも、いまいるメンバーたちの力を結集して「より良いチーム」をつくるための活動をどんどん仕掛けていきたい。働く仲間たちが成長を実感しながら自律的に動くことができる環境を整備していきたいし、研修その他の長期的な投資にも踏み切りたい。また、クロスフィールズならではの人事制度も色々と考えてみたい。

そんな主体的な変化への挑戦の気持ちを、「攻」という漢字に表現したつもりだ。

2017年の暮れには、「今年は攻めたなぁ」と言える年にすることを、ここに誓いたいと思う。

Cross Fields New Year Kick-Off_v2

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
   『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)
    ☆ Amazonランキング キャリアデザイン部門ベストセラー1位を獲得
    ☆ ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2016 年間17位

これからの世界を変える人材になりたいなら、もっと堂々とHになるべき

クリスマスの夜に書いていてちょっと変なテンションのため、どうでもいい下品なタイトルをつけて記事を書いてみることにする。

さて、こちら元ネタは、ハーバード・ビジネス・レビューの2017年1月号に掲載された「境界を超える"H型人材"が、世界を変えていく」というタイトルの入山章栄先生の論文だ。(「世界標準の経営理論」というタイトルのこの連載は毎回示唆に富むが、個人的には、社会学編に入ってからのここ3回の論文は特に参考になる)

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ストラクチャル・ホールという理論をもとに展開された今回の論文では、以下のようなことが力強く論じられていた。

・日本企業が伝統的に好むのは、1つの分野に精通する"I型人材"だった。日本の人材育成の世界では、それをベースとして、「1つの専門性の軸を深く縦方向に持って、後は多様な知見を持つ」という"T型人材"がこれまで注目されてきた。

・しかし、いま日本で大きな活躍をし始めているのは"T型人材"ではなく、「二本以上の縦軸があり、その間を往復している」"H型人材"である。

・異なる業界を跨って専門性を積み、境界を超えて越境するH型人材の代表例には、WiLの伊佐山元氏(日本の大企業文脈とシリコンバレー人脈をつなぐ)や、ヤフーCSOの安宅和人氏(脳神経科学とビジネスの世界とを行き来)がいる。

・これからの社会を動かす人の多くは、間違いなくH型人材になるだろう。



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↑早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生

僕は入山先生の考えに激しく賛同するのだが、同時に、ここ数年は同じような話を別の角度から色々と聞かされているような気もしている。

たとえば数年前のハーバード・ビジネス・レビューに掲載された「トライセクター・リーダーシップ」という論文。企業・行政・NPOという3つのセクターを行き来する人材がこれからの時代をつくるという話で、これはまさにH型人材の話だった。

また、前回の僕のブログ記事で取り上げたリンダ・グラットンの『LIFE SHIFT』でも、寿命100年時代にはこれまで属していない「多様性に富んだ新しいネットワーク」が重要になると指摘されていたが、この考え方もH型人材に通じるものがある。

もはや時代の流れとして、I型・T型からH型へのシフトというのは、当然のことになっているようにすら感じる。実際、日本でも出向やら副業・兼業が徐々に奨励され始めていることや、プロボノ・留職といった概念が話題になっているのも、この流れなのだと思う。

だが一方で、残念ながらこうした考え方はまだまだ日本では一般化はしておらず、ごく一部での周辺的な動きにすぎない。いまも1つの組織で脇目も振らずに成果を出すことがキャリアの王道だと考えられているし、H型人材になるような動きは、まだまだ敬遠されているように感じる。

では、それはいったいなぜなのか。
僕は単純に、H型人材になることが、周囲からの批判にさらされやすいからなんだと思う。

H型の人間になろうとする活動は、I型やT型の人間からすれば、自組織に対する浮気行為だと見なさがちだ。「自分の専門分野で結果も出してないのに、色々と目移りばかりしちゃってさ」という陰口を叩かれるし、活動が明るみに出ると、「あいつは仕事もしないで、好きなことばかりしやがって・・・」といった批判が飛び交うことになる。

伊佐山さんや安宅さんのような圧倒的な結果を出した人であれば別だが、そうなる過程では、目立てば目立つだけ妬みや批判の対象になるわけだ。まさに、「出る杭は打たれる」状況だ。周りを気にせず我が道を行くタイプであったり、周囲の批判があっても跳ね除けるような胆力がないと、なかなかH型人材を志向できない。普通は、やっぱり批判されるのが怖くなってしまう。

そんな中、僕の友人に、大企業のなかでこうした活動の旗振りを狂ったように続けているH型人材の男がいる。

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彼の名は、濱松誠(はままつ・まこと)、通称マック。パナソニックに勤める僕と同い年の34歳だ。いま東京のベンチャー企業に出向中の彼は、5年ほど前に社内の若手有志ネットワークであるOne Panasonicを起ち上げ、ボトムアップで会社を変えようと、パナソニックに社外との接点を積極的に創るなど、様々な動きを仕掛けている。

この動きは日本中に広がりそうした日本全国の社内ネットワークをつなぐOne JAPANという団体も、彼が中心になる形で今年起ち上がった。最近ではメディアも彼の展開する活動には大いに関心を寄せていて、彼自身も先日の日経ビジネスの「次代を創る100人」に選ばれるなど、注目度が一気に高まっている。

あまり内実は良く知らないけれど、これだけ社外で目立てば、当然、社内での妬みや批判も沢山あるんだと思う。僕の周りにも、「One JAPANとかってのができて注目されてるけど、なにをやりたいのか意味分からん」という声をチラホラ耳にするし、出る杭を叩こうとする動きが、盛り上がり始めているんじゃないかと思う。

ただ、きっと彼自身もそうした声があることは百も承知だし、それも分かった上で、あえて自分の役目として目立とうとしているんだと思う。この勇気は相当なものだと思うし、実際、僕はここまでの動きができる大企業勤めの同世代を見たことがない。なにより、彼が組織を飛び出して起業したりせずに(きっといくらでもチャンスはある)、大企業のなかで敢えて挑戦を続けるという姿勢には心から敬意を表したいし、全力で応援をしたい。彼のような存在が更に応援者を増やし、徐々に社内外で市民権を得ていくことで、日本社会においてもH型人材がもっとメインストリームになっていくからだ。

個人的には、彼にはこれからもどんどん暴れまくって欲しい。MITメディアラボ所長の伊藤穰一さん風に言えば、「出過ぎた杭は打たれない」ような気がするので、このまま思い切り目立ち続けることが、実は彼にとっては最大の防御にもなる気もしている。

おそらく、特に大企業の中でH型人材を志向している人には、陰に隠れてコソコソと活動をしている人が多いように思う。でも、彼の活動なんかを見ていると、むしろ大事なのは思い切りのよさだったり、派手さのような気もしてくる。だからぜひ、組織の外で活動をして何かを起こしたいって人は、もっと胸を張って堂々とエッチになるべきだと思うのです!

って、今日はなんだか最後まで、すみません。。。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
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「LIFE SHIFT」を日本で起こすには?NPOからの地味な提言

LIFE SHIFT

いつも新しい視点をくれるリンダ・グラットン氏の最新作「LIFE SHIFT」を読んだ。名著「WORK SHIFT」はインドで読んで大いに刺激を受けたが(その時の記事はコチラ)、今作もたまたま出張中の海外(フィリピン)で読んだせいもあってか、なんだか色々なことを考えさせられた。

かなりいい加減だが、要旨としては、だいたいこんな感じ。

・これから寿命はどんどん長くなる。たとえばいま20歳の人が100歳まで生きる確率は50%を上回るようになっており、私たちはすでに人生100年の時代を生きている。

・人生100年時代では、「教育→仕事→引退」という3ステージを画一的に進んでいくという従来の生き方では対応できなくなる。人生はもっと多様になり、「人生を模索する期間」や、「色々な仕事を掛け持ちして働く期間」などが、年齢とは関係なく入り組む「マルチステージ」の人生へとシフトしていく。

・寿命が長くなると、貯蓄はこれまで以上に蓄えなければならない。また、これまでよりも長い期間働く必要があるため、変化に対応しながら長期にわたってスキルを磨き続ける必要が出てくる。

・これまでは、時間が余ったりしたときや、老後の時間などは「余暇(レクリエーション)」にあてるという人が多かった。だがこれからは、大学で講座を受けたりパートタイムで別の仕事をしたりして自分に投資する、「自己の再創造(リクリエーション)」のために時間を使う人が増えていく。



どんな世代の人にも、どんな仕事をしている人にも示唆的な内容だと思うので、興味を持ったという人は、ぜひ読んでみることをオススメしたい。以下、ざっくりと自分がこの本を読んで考えたことを書いてみる。


そもそも、この本に書いてある世界観にいち早くシフトしなければいけないのは、世界で最も早いスピードで高齢化が進む日本社会だと思う。そうならないと、日本は40年間もの「老後」を生きる人たちに溢れる社会になってしまって、それは社会全体としても、極限に長い「老後」を生きる人にとっても、不幸でしかない。

だが残念ながら、この本に書かれているような「ダイナミックにキャリアチェンジを繰り返しながら生きる」ようになるというLIFE SHIFTが日本で本格的に起きるには、大きな障壁がある。

日本では多くの人が終身雇用的な働き方に慣れきっていて、人生のステージを変えようにも、「いまの企業で働くこと」以外の選択肢を思い浮かべられないケースがほとんどだからだ。定年を迎えて突如会社の名刺がなくなってしまうと、有り余る時間を埋める手段はといえば、近所の公民館で時間を過ごしたり、あるいはゴルフや旅行に明け暮れるくらいになるという人はすごく多いのではないだろうか。

もちろん人それぞれの人生観であり、そのこと自体を否定したいわけではない。だが、社会全体がこうした状況を続けていたら、あまりにも社会としての生産性が低すぎると僕は思うのだ。

企業の側も、大量採用した世代の社員が全員定年まで勤め上げる(つまり、企業として給与を払い続ける)ことの恐ろしさには当然気付いている。仕事柄、僕は企業の人事部の人たちと話したりすことも多いが、「シニア層の従業員の多くには、早い段階で幸せなセカンドキャリアを歩んでもらうのがベスト」と企業側も考え始めているようだ。

だが、日本の真面目なビジネスパーソンたちは「自組織のために最後まで精一杯働くのが美学」という姿勢を頑なに貫いており、その良くも悪くも盲目的な視点がために、なかなかキャリアチェンジは起きにくいというのが現状だ。現時点では、有効な処方箋は見つかっていない。


ここで、NPOの世界に身を置く人間として、ひとつ非常にシンプルな提言がある。

地味ではあるが、ボランティアやプロボノというかたちで社会にかかわる機会をもっと増やしてはどうだろうか?大袈裟だが、これによって日本でもLIFE SHIFTが推進されていくと僕は思うのだ。

NPOの活動に携わることは、「自分の人生にとって何が大事なのか」を普段とは違う視点で考えるキッカケにもなる。また、自分が普段所属している組織の人たちとは全く違うコミュニティの人たちから刺激を受けることもでき、視野やネットワークが広がるからだ。何を隠そう、僕自身も青年海外協力隊というボランティア経験によって人生に対する視野やキャリアの選択肢が大きく開けたという原体験を持っている。

こちらは、総務省が5年おきに行っている社会生活基本調査(平成24年度版)からの抜粋で、男女・世代別でのボランティア活動の参加率をグラフ化したものだ。

ボランティア

勤労世代のボランティア参加率は概ね30%程度という水準だ。よくよく見てみると、30-45歳の女性でボランティアの参画率がグンと上がるのが見て取れる。おそらくは結婚・出産による退職や、子育ての大変な時期が終わるなどのライフステージの変化が影響しているのだろう。一方で男性は比較的どの世代でも低調で、30-45歳での上昇も女性に比べるとなだらかだ。ただ、定年退職を迎える65歳以降では女性を逆転していたりもしている。

個人的には、特に社会との断絶が激しい30~50代のビジネスパーソンには、もっともっとNPOの活動を通じて、会社以外の社会に直接的に触れて欲しい。そうすることで、定年後の自分のキャリアについて考え始める準備にもなるはずだし、もっと違う人生の時間の使い方に気付いて、人生を豊かにする選択をする人が増えるとも思うからだ。

折しも、時代は少しずつ変わり始めている。政府による「働き方改革」の推進や、一部企業による「副業解禁」「週休3日制」などといった流れは、多くの人に会社以外で時間を過ごす働き方を後押ししている。また、ブラック企業の長時間労働に対する批判の高まりは、「いまの会社にすべてを捧げるモデル」からの脱却に向けた追い風だ。

こうした動きでこれから確実に増えていくだろう働く人たちの「自由時間」を、ぜひともNPOの活動に積極的に向けて欲しいと切に思う。同僚と飲みに行ったり、いまの仕事に関する本を読んだりする時間だけにするのではなく、ぜひとも、新しい世界のドアを開けることにも使って欲しいと思う。

国としても、NPOが発行するボランティア証明書に記載された時間に応じて税金を控除する制度を導入するとか、あるいは、長期ボランティアに従事する人向けの助成金や社会保障制度の拡充とかをしてはどうだろうか。また、企業としても、兼業・週休3日制・長期ボランティア制度などを更に推進するとともに、NPOでのボランティア経験を何らかの形で人事考課に組み込んでもいいかもしれない。

いまこそ、長寿社会ニッポンから、世界に先駆けたLIFE SHIFTを起こし始める時だと思うのです。そして、そこに意外とボランティアやプロボノが効くと、僕は強く信じています。嘘だと思った人は、ぜひ自分の目で確かめて下さいませー!

<<ボランティア・プロボノがしたくなった人への参考情報>>
★ ボランティア情報は実はYahoo!ボランティアが一番充実してます!
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  (サービスグラントSVP東京二枚目の名刺a-conなどが有名な仲介団体です)

以上。
なんだか長くなりましたが、最後まで読んでくださった方には、心から感謝!

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
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NPOが陥るエリート主義という機能不全

英国でのBrexit、そして米国でのトランプ大統領の誕生など、今年はちょっと常識では考えられないようなことが世界各地で立て続けに起きている。

なぜこうしたことが起きているのかを、経営共創基盤の冨山和彦さんが、『「Gの時代」が終わり、「Lの時代」がやってきた』というNewsPicksの記事の中で、非常に明瞭に解説している。

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詳しくはぜひ元記事を見てもらいたいが(閲覧にはNewsPicksへの登録が必要)、「グローバルエコノミーの中で急上昇していく人たち(Gの住民)と、ローカル経済の中に閉じ込められている人たち(Lの住民)の間で大きな格差が広がっていて、Lの世界の人々が反乱を起こしている」というのが冨山さんの解説の趣旨だ。

そして、僕がこの記事を読んでいて強く感じたのは、「非営利セクターが抱える矛盾」についてだ。

Lの世界にいる社会的弱者の声をきちんと拾い、その課題を世の中に提示して社会を良くしていくという活動は、まさにNPOの使命の一丁目一番地だと言える。ある意味で、Gの世界を支える資本主義をベースにした企業活動に対して抵抗し、別の価値観を提示したり、あるいは、弱者も包摂する形での社会のあり方を模索するのが、NPOの存在意義であった。

つまり、行き過ぎたGの世界に対して、Lの世界の視点からNOを投げかけて世界にバランスをもたらすという機能が、NPOには本来的には求められている。しかし、世界的な視点で見ても、日本国内のNPOを見ても、どうもNPOはその観点では機能不全に陥りつつあるように僕には感じられるのだ。

3点ほど、主に日本国内でのNPOのセクターでの気になる動きを挙げたい。


①企業活動というGの世界への迎合

第一に、僕の経営するクロスフィールズなどを筆頭に、企業の活動に対してNOと言わず、むしろ企業とコラボレーションするという姿勢を持つNPOが台頭したことが挙げられる。

これによって企業とNPOとが一緒になって価値を生み出せるようになったという大きな進化があったという反面で、企業の活動に正面からNOと言う主体者が減ってしまったとも捉えられる。悪い面だけ見れば、Gの世界の活動である企業活動のなかに、NPOの活動が取り込まれてしまったとも言えるかもしれない。

②Lの世界の代弁者であるという立ち位置の喪失

次に、2005年頃からの社会起業家ブームに乗って、事業収入を主な収入源とする事業型NPOが増えてきた動きも見逃せない。

寄付金や会費での収入によって運営を行う寄付型NPOは、株主としての寄付者や会員がいるため、そうした支援者や受益者(この中にはLの世界の人たちも多く含まれる)の声を無視した行動を取りづらいという特性がある。一方で事業収入が予算の多くを占める事業型NPOには、寄付者や会員の基盤が弱い団体が多いため、Lの世界の代弁者としてのNPOという色は薄まってきていると言える。(そして、近年メディアなどでよく注目を集めているNPOには事業型の団体がとても多い。)

また、かなりマニアックな話ではあるが、寄付型NPOのなかにも、議決権を付与しないサポーター会員という形で会員を募集している団体が急速に増えている。この制度を活用すると、不特定多数からなる多数の会員の合意を取る手間が大幅に軽減される。これによってNPOの経営のスピードや柔軟性は高まるったが、その一方で、NPOのガバナンスに一般市民が参画するという体制は、日本でNPO法が施行された1998年当時と比べると大幅に弱まったように思う。

冒頭にも書いたように、NPOというのは、政府や企業に対して市民社会を代表して声を届けるという役割が期待される組織体だ。しかし、自戒の念も込めて厳しい見方をすれば、いまの状況では、一般大衆から票を集める必要のある政治家のほうがよっぽど熱心に市民の声に耳を傾けていると言えるかもしれない。

③高学歴エリートの職場であるという体質

最後に、NPOのセクターで働く人にも注目したい。実はNPOで働いている人には高学歴者が驚くほどに多い。僕は職業柄、多くのNPOの経営者やそこで働く人にもお会いするが、特にメディアなどでよく見かけるような注目度の高い団体であればあるほど、その傾向は強いように思う。国際協力系の団体などでは、ほとんどの職員が欧米大学院での修士号を取得しているといった具合だ。

もちろん、こうした優秀な人材がNPOの世界で活躍するようになっているのは、歓迎すべき素晴らしいことだ。だが、そのことは同時に、NPOで働く多くの人がGの世界の住人たちになっていることを意味している。当事者性を持ったLの世界の住人が自ら旗を振って活動しているようなNPOは、ここのところその数が減ってしまっているように感じる。


以上が、客観的なファクトには基づかない僕の印象論メインの考察だ。おそらく、僕とは違う意見を持つ人も多いかもしれない。

だが、僕の目には、NPOの活動はLの世界とは切り離され、Gの世界のなかで完結するものになってきてしまっているように映っている。そして、こうしたNPOの機能不全が、現在世界で起きている混乱の一因になってしまっていると、僕は自戒の念を込めて感じている。

今後も、格差に苦しむLの世界での反乱が更に激しさを増していく可能性は高い。そんななかで重要となるのは、NPOの活動がLの世界の人々の声を聞き、その声をGの世界へと届けていくことだ。そのことが両者の格差の拡大を止めることに繋がるはずだからだ。

その意味で、NPOの活動にかかわる全ての人たちは、社会課題を抱える当事者の視点や、Lの世界の人々が抱える不安や不満の声に対して、もっともっと自覚的にならなければならないと僕は心から思う。

ある意味ではGの世界に組み込まれているNPOの代表格であるクロスフィールズを経営する自分がこのようなことを言っても、「お前が何を言ってるんだ」と思う人も多いかもしれない。でも、そんな自分がこうしたことを発信することも大事だと思い、思い切り自戒の念を込めて書いてみた。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
※ 2016年9月2日(金)に初の著書が発売になりました。
   『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)

カープ優勝の感動を、無理やり経営の学びに落とし込んでみた

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2016年9月10日、広島東洋カープが25年ぶりのリーグ制覇を決めた。

広島とは縁もゆかりもない僕だが、中学で野球を本格的に始めた頃から、天才・前田智徳とカープの打撃陣の思い切りの良さに魅了され、以来20年以上にわたってファンを続けてきた。そして、多くの若い世代のカープファンと同じように、リーグ制覇の瞬間を初めて目撃して、テレビの前で号泣したわけだ。

本当に、感動した。感動しすぎて、まったくその余韻が消える気配がない。

いまこうしているときも、黒田と新井が抱き合った瞬間の情景(下の写真を参照)が脳裏に浮かんで目頭が熱くなってしまう。もはやカープのことを考えないようにしても無理なので、開き直って、カープ優勝の要因を自分なりに勝手に分析して、そこから自団体の経営の参考になることを考えてみようと思い立った。

完全に自分の趣味なので、誰にどんな誹謗中傷を受けようとも、迷わず書き進めていこうと思う。

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↑カープファンとしては一生忘れられない名場面(日刊スポーツより)

おそらく、これから多くのメディアが「なぜあの弱かった広島が今年優勝できたのか」を論じていくだろう。
そして、その中心に来るのは、こんな話題になるはずだ。

・若手の野手(田中/菊池/丸に加え、鈴木誠也)が活躍・急成長した
・ベテラン(黒田/新井)が精神的支柱としてチームを引っ張った
・外国人選手の起用が大当たりして、シーズンを通じて活躍した
・去年まで不安要素だった中継ぎと抑えが安定し、投打が噛み合った

このあたりがカープが優勝できた理由なのは、紛れも無い事実だ。でも、今回の快進撃には、それ以外にも様々な背景があったように思う。弱小チームが圧倒的な強さで優勝するというストーリーからは、きっと多くのことが学び取れるはずなのだ。

そこで、経営にも通じそうなことを切り取って、カープ優勝の要因を独断と偏見で5つほど語ってみたい。

1.勝ちグセがついた

いきなりバカっぽい理由だが、今年のチームが優勝できた一番の理由は「勝ちを積み重ねられたから」だと思う。今年のチームは戦力的にもたしかに強かったが、何よりも、序盤に勝ちグセがついたことが大きかった。勝ちが重なることで、選手たちの間に「今日もいける」という雰囲気が日に日に醸成されていったのだ。

また、選手たちが共有していた勝ちパターンというのが、「逆転勝ち」という最強の勝ちグセだったのが強烈だった(広島は現時点でリーグ断トツの43回の逆転勝ちを収めている)。どんなに負けていても「今日も絶対ひっくり返せる」と選手たちが本気で信じているわけだから、相手チームとしては嫌でたまらない。

団体の経営で考えてみても、「勝ちパターン」の組織内での浸透は非常に重要なことではないだろうか。

何をすればチームが成果を上げられるのか、その成功パターンをメンバーが共有できているかどうかで、チーム力は大きく変わってくる。そして、勝ちパターンを浸透させるためには、やはり試合に勝たないといけない。どんなに見事な戦略を考えても、それが成果に繋がっていなければ意味がない。まずはとにかく成果を出すことしか、勝つための道はないのだ。

2.負けても打たれても、切り替えができた

続いても非常にアホっぽい理由だが、負けても切り替えができたというのも、実にスゴいことだったと思う。

今年のカープはここまで4連敗が1回あるだけで、それ以上の連敗は経験しておらず、あとは全てを2連敗までで止めている。また、これはデータがないけれど、特定の回にずるずると大量失点するようなケースもほとんど見られなかったと記憶している。要するに、大崩れしなかったのだ。

メジャーから帰ってきた黒田投手が若手投手に口酸っぱく言っていたのは、「1点取られても落ち込まずに、大崩れしないこと」ということだったらしい。ベテランの黒田らしい言葉だが、「自分の調子が悪い時にも、悪いなりに試合をつくるのが大事」なのだそうだ。自分の調子が悪いことを受け入れ、それでも何とか通用する球種を見極めて、それで何とか試合をつくっていく。これが黒田の姿勢であり、今年のカープの姿だった。

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これはそのまま経営に活かせることだと思う。

ピンチに陥っても冷静さを保ち、失ったもののことは考えず、「いま自分たちの持っているもの」や「通用していること」に目を向ける。そして、自分のいまのパフォーマンスを最大化することに注力することが、負のスパイラルに陥らないための絶対的な秘訣なのだ。

3.健全な危機感を持っていた

実は今年のカープは前評判が高かったわけではない。むしろ去年の方が、前田健太という絶対的なエースがいるところにメジャーから黒田が帰ってくるということで、リーグ制覇への期待は高かった。あらゆる専門家の分析でも、昨年は可能性があったものの、今年は前田健太が抜けることもあって、優勝の可能性は非常に低いと予想されていた。

だが、往々にしてスポーツでは、こうしたカリスマ的なパワーを持つ選手が抜けることで、逆に組織に健全な危機感が生まれ、それがプラスに作用するということが起こる。今回も、前田健太がいなくなったという危機感を、他の選手たちが一様に共有していたことが大きかったように思う。(無論、前田健太の移籍金20億円で様々な補強ができたことも同じくらい大きかったが…)

ある特定の強いプレイヤーが1人いて活躍しているチームよりも、健全な危機感を共有して1人1人が必死に頑張るチームの方が強いというのは、スポーツの世界だけでなく、どんな世界でも当てはまることなのではないかと思う。

4.球場(つまりはファン)に投資した

優勝インタビューのときに選手が口々に「球場が変わったのが大きかった」と言っていたのが、僕にはとても印象に残った。

広島カープは2009年にホーム球場を新設しているが、これがかなりの気合いの入ったスタジアムだった。球団職員がアメリカ視察を繰り返して、広島ならではの魅力的なスタジアムを考案し、広島の産業界が思い切り尽力してつくったのが、MAZDA Zoom-Zoomスタジアム(通称:ズムスタ)だ。

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「カープ女子」なる言葉が社会現象のようになるなど、カープファンが急増して観客動員数が一気に増えていったのは、このスタジアムの新設をきっかけにしてのことだった。そして、当然ながら、ファンが増えることで、選手たちも気合い入る。ファンの期待が高まっていくのに応えて、「いつまでも低迷していてはダメだ」という意識が芽生えていったのだ。

つまり、広島の快進撃は、選手・監督の頑張りだけではなく、まったく勝てずに低迷していた時代に、「ファンを増やす」ことを中心に据えて、球団側が思い切った未来への投資を決断したことから始まったと言える。

やはり、思い切った攻めの一手がなければ、チームの飛躍はあり得ないと思う。そうした英断をチームの低迷期にできたということが、広島カープの転換点となったのだ。

5.前監督の投資が花開いた

最後に、前監督である野村謙二郎氏の貢献が大きかったことを挙げたい。

野村氏が2013年に3位となり初のCS進出を果たすまで、カープは実に15年間に渡ってBクラス(4位以下)に甘んじていた。その状況を変え、CS進出を果たすとともに優勝を狙えるチームにまで成長させたのが、野村氏だった。

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野村氏は、在任中にチーム力を高めただけでなく、とにかく若手にチャンスを与え続けた。もちろんその中には芽の出た選手もそうでなかった選手もいたが、彼の選手起用を見ていると、そのシーズンだけではなく、確実にその先を見据えたものだったことが伺える。

そして、緒方新監督になって2年目の今年、野村氏が種を蒔いた若手たちの活躍を1つの原動力として、歓喜の瞬間を迎えたわけだ。

人への投資がいかに大切であるか。そして、偉大な成果を達成するには、いかに長期的な目線での我慢が必要であるか。野村氏の目線からは、そんなことが読み取れるように思う。


・・・以上、独断と偏見に基づいた、5つのカープ優勝の要因を書いてみた。

改めて、カープ、感動をありがとう!
ファンをしていてよかったです。

なんだか少しスッキリしたので、そろそろ寝ようと思います。
ではでは、おやすみなさい。

NPO法人クロスフィールズ
小沼大地(@daichi0715

※ 当記事はNPO法人クロスフィールズ代表小沼の個人的著述です。
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